憲法 論文10(プライバシー権と表現の自由)(ランクB+)

論文 憲法

はじめに

こんばんはマークです。電子申請の記事に多くの方がクリックしていただきありがとうございます。大変励みになります。本日は憲法論文の10回目をやっていきます。よろしくお願いします。

本日の問題

有名作家Aが自分の小説作品に友人Bをモデルとした人物Cを登場させ、Bの経歴とか顔に重度の障害を負っていることなどを具体的事実として描き、出版した。小説の内容としては逆境に立ち向かっていく人間の姿を肯定的な表現で描いていたが、Bは「勝手に小説のモデルに使われた」として小説の今後の出版差し止めを求めて提訴した。この請求は認めることができるであろうか。

論点

◆人格権

◆人格権に基づく差し止め請求~人格権と表現の自由

ベースとなる判決

石におよぐ魚事件(H14.9.24)

Bをモデルとし,経歴,身体的特徴,家族関係等によってBと同定可能なCが全編にわたって登場する小説において,Cが顔面に腫瘍を有すること,これについて通常人が嫌う生物や原形を残さない水死体の顔などに例えて表現されていること,Cの父親が逮捕された経歴を有していることなどの記述がされていることなど判示の事実関係の下では,公共の利益にかかわらないBのプライバシーにわたる事項を表現内容に含む同小説の出版により公的立場にないBの名誉,プライバシー及び名誉感情が侵害され,Bに重大で回復困難な損害を被らせるおそれがあるとして,同小説の出版の差止めを認めた原審の判断には,違法がない。

注意点(自分なりの組み立て)

◆人格権ってなんだかそんなのありそうでなさそうで…。13条からどう導いてくるか。

◆これが小説家Aの表現の自由とどうバランスさせるか~比較衡量

◆出版されるとBの精神的苦痛は倍加。読者が増えれば増えるほどBの精神的苦痛が増加。~これをどうやって説明していくか。~Bの具体的な事実を詳細かつ多数にわたり描写することで、Bがこれまで他人には秘密にしておきたいと思っていた多数の情報が外部に露呈され、Bが多大な精神的苦痛を被る可能性があるのだ、と説明する。

◆また個人対個人なので私人間適用をどう考えるかをしなければいけないよね。でもこれに関しては判例はなんかきちんと説明していない。直接適用ではなく、民法の公序良俗などの解釈を通じて憲法の精神を適用する間接適用だとして論じるべきかもしれない。

条文

13条後段

21条1項

論証

◆人格権と表現の自由

 どのような場合に人格権に基づき侵害行為の差し止めが認められるかが問題となる。

たしかに人格権は個人の人格的価値に関わる利益を保護するものであり、いったん傷つけられると容易に回復し難いという性格を有する権利である。

しかし他方、表現の自由は個人が言論活動を通じ、自己の人格を発展させるという自己実現の価値と、言論活動により国民が政治的意思決定に関与するといった自己実現の価値から、優越的地位を有する権利である。

そうだとすれば人格権と表現の自由との間では、容易にその優劣を決することはできない。そこで、侵害行為の対象となる人物の社会的地位や侵害行為の性質に留意し、予想される侵害行為によって受ける被害者側の不利益と侵害行為を差し止めることにより侵害者側が受ける不利益とを比較衡量したうえで決すべき。

そして、侵害行為が明らかに予想され、その侵害行為により被害者が重大な損失を受ける恐れがあり、かつ、その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認めるときは、侵害行為の差し止めが認められると解する。

答案構成

第1 人格権に基づく差止め請求~ほぼ論証で成り立っている。

1.人格的価値に関わる利益保護⇒個人の人格的生存に不可欠⇒13条後段を根拠として保障される

2.人格的価値の重要性⇒きわめて重要⇒人格権に基づき侵害行為の差し止めを求めることができる。

3.小説が出版されると人格権に対する制約が発生する。

第2 でも作家であるAの表現の自由(21条1項)と対立する

ではどのような場合に差し止めが認められるか?

表現の自由と人格権に権利における優劣はなし。⇒対象の人物の社会的地位や侵害行為の性質について比較衡量をする⇒侵害行為が明らかに予想され、被害者が重大な損失を受ける可能性があり、かつ、事後回復が不可能もしくは著しく困難 であるときは差し止めが認められる

第3 これを本件についてみると(あてはめ)

1.Bはパブリックフィギュア(公人とか有名人)じゃない。

2.本の内容は逆境に立ち向かう人間の姿を描き、しかも積極的な内容で書かれている。問題はBの経歴とか顔の重度の障害といった具体的事実。⇒公共の利害に関する事項ではない。

3.有名作家Aの作品は社会的な関心が強いといえる。出版すると発行部数も多いものとなる。

4.出版されるとBの精神的苦痛は倍加。読者が増えれば増えるほどBの精神的苦痛が増加。⇒差し止めの必要性は大きい!!

5.以上からBの被る不利益は作家Aの被る不利益を上回る。 侵害行為が明らかに予想され、Bが重大な損失を被るおそれがある。また、事後的賠償による不利益防止は不相当。事後回復は不可能または著しく困難といえる。

第4 以上よりBの人格権に基づく出版差し止め請求は認められる。

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