はじめに
本日は憲法論文の第1回として「外国人の人権と公務就任権」についてやっていきたいと思います。試験前にぱっとみて頭の中を整理することを目的としているので短時間で見直しができるため、有用だと思います。
本日の問題
- 地方公共団体が職位の採用において、日本国籍であることを受験資格の一つとした場合、 憲法上の問題点について論ぜよ。
- 日本国籍を有することを管理職員登用資格の一つとした場合についても論ぜよ。
(旧司法試験平成9年度第1問)
なんとH19年には本問+地方議会議員との違いについても出題されている。
論点
- 外国人の人権享有主体性はどうなっているか
- 公務就任権の憲法上の根拠はどうなっているか
- 地方公共団体の職員採用試験の受験資格に日本国籍を有することを入れることの可否
4.同様、管理職員登用資格のひとつとすることの可否
ベースとなる判例
- マクリーン事件(最判S53.10.04) ~基本的人権の保障は権利の性質上日本国民のみを対象とすると解されるもの を除き、外 国人にも等しく及ぶ。…………。 ~この論文で使うのはこの部分となる。
- 東京都管理職試験事件の控訴審判決 (東京高裁H9.11.26) 東京都に保健師として採用された在日韓国人女性が、日本国籍を有しないことを理由に管理職選考の受験資格を認めらなかったことに対して、処分取り消しと損害賠償を求めた。 →争点は公権力行使等に携わる公務員に該当しない一般職の職員について、管理職への昇任に日本国籍条項を設けることが違法かどうか。 →原告の請求を一部認容。東京都の国籍条項による受験許否は違法と判断。
- 東京都管理職試験事件(最判H17.1.26) ~一体何年訴訟しているの? 14条1項に反しないか? →違反しない。 平等は相対的平等。合理的な理由に基づくものであれば14条1項に違反するものではない。公権力の行使、地方公務員の職務の遂行は住民の生活に直接重大なかかわりを有するもの。原則日本国籍を有する者が公権力等地方公務員に就任することが想定されている。よって合理的な理由に基づく区別であり、14条1項に違反しない。
注意点(ここが大切 本当に自分なりに問題点をあげれるか)
ベースとなる判例→判例のロジック、どういった論点が争われたか、今回の問題に対して射程に入るのか、入る入らないの区別が分かるか とかを駆使して問題点を洗い出す。
あとは事案に対して色々な説からのアプローチで対立が起こったりするよね。
【前段】
◆え~こんな名前の権利があるの?って思うけど、公務就任権ってきちんとした人権のようです(改めて考えると思い浮かぶ人権の中に入っていなかった)。調べると、広義の参政権 または職業選択の自由の一部として解釈されている。法の下の平等(14条)だけでなく、国民主権の原理(15条1項)に基づき国民固有の権利として保障されていると考えられているとのことだった。 また職業選択の自由で書いてもよいということになる。
◆地方公共団体が職員採用上、日本国籍を受験資格とする合憲性
◆外国人の人権保障はマクリーン事件を参考に「性質説」の立場で論じる
◆国民主権原理との抵触を問題の所在として指摘した上で、東京高裁の裁判例を参考に検討
◆外国人の公務就任権は15条、22条1項、13条後段説に分かれている。
◆平等権違反は外国人の公務就任権の侵害に対する合理化の可否で一緒に検討する。
【後段】
◆同問題の合憲性を問うもの。
◆東京都管理職試験事件をもとに、一体的な管理職任用制度を設けることの合憲性を検討
◆判例通りならば合憲 →答案構成は違憲で構成した。
条文
◆15条1項 :公務就任権の根拠~職業選択にとどまらず政策遂行に関わるものである点で参政権的側面を有するので15条で保障される
◆11条、97条 :人権の前国家的性格
◆前文3段、96条2項 :国際協調主義
◆前文1段、1条 :国民主権原理
答案構成
第1 前段
1.国籍要件が外国人の公務就任権を侵害しないか
2.公務就任権…15条1項により保障されている
でも外国人にも保障されるのか?
→(論証)(判例の性質説)権利の性質上。日本国民のみを対象としているものを除き保障される。
→公務就任権について検討すると
憲法は国民主権原理を採用(15条1項)。
地公体は統治機構で不可欠の要素。だから統治→国民主権原理でなれるのは日本人
しかしながら補佐的・技術的職務を行う公務員については外国人が就任しても国民主権原理に抵触しない。
公務就任権は外国人にも保障される。
3.日本国籍を受験の要件にすることは外国人の公務就任権への制約になる
4.でも外国人の公務就任権は国民主権との関係から、国民と同様の保障が及ぶとはいえない。中間審査でいこう。具体的には
規制の目的が重要で、その手段が効果的かつ過度でない場合にかぎり正当化される
5.目的は国民主権原理との抵触を避けることにある。民主主義の根幹を支えるものとして重要。
6.手段は一律に国籍要件を設けており、過度の制約があるといえる。
7.よって15条1項に反し、違憲。
第2.後段
1.管理職登用資格に日本国籍を要件とすることは外国人の公務就任権を侵害しないか?
2.管理職であっても公権力を行使しない職への就任権は外国人に保障されている。
3.日本国籍を受験資格にすることは外国人公務員の管理職登用を一切不可能とする。
これは制約となる。
4.いかなる管理職制度を設けるかは行政組織の判断に委ねられる。
しかし一方で非公権力行使等公務員への就任権は保障される。
5.規制の目的が重要で、手段が効果的かつ過度でない場合に限り合憲。
目的は前段同様重要。
6.一方一律に日本国籍を登用の要件とすることは手段として過度。
7.よって15条1項に反し違憲。
論点落とし(抜け落ち注意)
平等権違反は外国人の公務就任権の侵害に対する合理化の可否で一緒に検討する。(今回は特になしということ)
論証
憲法は「国民の」と定めているところ、外国人にも人権保障が及ぶかが問題となる
~この点について、人権の前国家主義的性格(11条、97条)や憲法が国際協調主義をとっている(前文3段、98条2項)ことから、権利の性質上日本国民のみを対象とすると解されるものを除き、外国人にも人権保障が及ぶと解する。
三段論法との差等があれば
平等権で論ずるなら二段階審査。 (今回はない)


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