憲法 論文8(教育内容決定権)

論文 憲法

はじめに

こんばんはマークです。今回は第8回目として教育内容決定権をやっていきます。

本日の問題

Xは高等学校用の教科書を「日本史」を執筆し、教科書検定に申請。その教科書には「日本軍は731部隊という細菌戦部隊を設け、捕虜に対し生体実験を加えて殺す残虐な作業をした」という記述あり。教科書として合格するには731部隊については、現時点で信用に耐えうる学問的研究が発表されておらず、時期尚早との理由でこの記述を全部削除する旨の検定意見を付した。ただし、731部隊が存在し、生体実験をし、多数の捕虜を殺害したとの大筋は検定当時の学会では否定する者はいないほど定説化していた。この事例において憲法26条との関係で憲法上問題となる点を論ぜよ。

論点

・教育内容決定権は誰にあるのか(教師?、国?)

・教科書検定制度の合憲性

・教科書検定における文科大臣の裁量権の範囲はどこまで

ベースとなる判例

◆旭川学力テスト事件(S51.5.21)

  1. 地方教育行政の組織及び運営に関する法律54条2項と昭和36年度全国中学校一斉学力調査の手続上の適法性
  2. 憲法と子どもに対する教育内容の決定権能の帰属
  3. 教育行政機関の法令に基づく教育の内容及び方法の規制と教育基本法10条
  4. 昭和36年当時の中学校学習指導要領の効力
  5. 昭和36年度全国中学生一斉学力調査と教育
  6. 教育の地方自治と昭和36年度全国一斉学力調査の適法性

判決は以下の通り

  1. 地方教育行政の組織及び運営に関する法律54条2項は、文部大臣に対し、昭和36年度全国中学生一斉学力調査のような調査の実施を教育委員会に要求する権限を与えるものではないが、右規定を根拠とする文部大臣の右学力調査の実施の要求に応じて教育委員会がした実施行為は、そのために手続上違法となるものではない。
  2. 憲法上、親は一定範囲においてその子女の教育の自由をもち、また、私学教育の自由及び教師の教授の自由も限られた範囲において認められるが、それ以外の領域においては、国は、子ども自身の利益の擁護のため、又は子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、子どもの教育内容を決定する権能を有する
  3. 教育行政機関が法令に基づき教育の内容及び方法に関して許容される目的のために必要かつ合理的と認められる規制を施すことは、必ずしも教育基本法10条の禁止するところではない。
  4. 昭和36年当時の中学校学習指導要領(昭和33年文部省告示第81号)は、全体としてみた場合、中学校における教育課程に関し、教育の機会均等の確保及び全国的な一定水準の維持の目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な遵守基準を設定したものとして、有効である。
  5. 昭和三六年度全国中学校一斉学力調査は、教育基本法10条1項にいう教育に対する「不当な支配」として同条に違反するものではない。
  6. 文部大臣が地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項の規定を根拠として教育委員会に対してした昭和三六年度全国中学校一斉学力調査の実施の要求は、教育の地方自治の原則に違反するが、右要求に応じてした教育委員会の調査実施行為自体は、そのために右原則に違反して違法となるものではない。

以上のことから学テは合憲であると結論付け、被告人に公務執行妨害罪の成立を認め、原判決及び第1審判決を放棄して執行猶予付き有罪判決を自判した。

◆教科書裁判第一次訴訟上告審(H5.3.16)

  1. 教科用図書の検定に当たり文部大臣が原稿記述に訂正、削除又は追加などの措置をした方が教科用図書としてより良くなるものとして指摘する改善意見は、これに応ずることを合格の条件とはせず、文部大臣の助言、指導の性質を有するものであって、これを付することは、教科用図書の執筆者又は出版社がその意に反してこれに服さざるを得なくなるなどの特段の事情のない限り、その意見の当不当にかかわらず、原則として、国家賠償法上違法とならない。
  2. 昭和五八年に申請された高等学校用日本史教科用図書の改訂検定を行うに当たり、文部大臣が、七三一部隊に関する記述につき、現時点ではまだ信用に堪え得る学問的研究、論文ないし著書が発表されていないので、これを取り上げるのは時期尚早であるとの理由で、右記述を全部削除する必要があるとの修正意見を付し、右削除を合格の条件としたことには、右検定当時、七三一部隊に関して多数の文献、資料が公刊され、七三一部隊の存在等を否定する学説は存在しなかったか、少なくとも一般には知られていなかったなど判示の事実関係の下においては、その判断の過程に、検定当時の学説状況の認識及び検定基準に違反するとの評価に関して看過し難い過誤があり、裁量権の範囲を逸脱した違法がある。

注意点(自分なりに組み立てられるか)

旭川学力テスト事件は短答でも頻出、教科書裁判も頻出ではあるが、しっかりと要点を言えるようにしておかないと時間内に回答できない。

「国は必要かつ相当と認められる範囲において、子どもの教育内容を決定する権能を有する。」とか、「検定当時の学説状況の認識及び検定基準に違反するとの評価に関して看過し難い過誤があり、裁量権の範囲を逸脱した。」の部分は完全に覚えておかないといけない。

条文

26条1項

論証

◆教育を受ける権利

教育内容を決定する権能の所在を如何に解するかが問題となる。

この点について26条1項の背後には国民各自が独立の人格として成長するために必要な学習をする権利(学習権)を有すること、特に自ら学習することのできない子供は教育を自己に施すことを大人一般に対して要求する権利を有するとの概念が存在していると考えられる。

そうだとすれば、教育内容決定権の所在についても、この学習権の保障を充足するような解釈をするのが妥当である。

このような観点から考えると、直接子供に接する教師等の国民側に一定の範囲で教育内容決定権を認めるべきであるが、それ以外の領域においては、国が適切な教育政策を実施しうるものとして、①子供が自由かつ独立との人格として成長することを妨げるものではなく、②必要かつ相当と認めれられる範囲において教育内容決定権を有すると解する。

答案構成

第1 教科書検定制度⇒国が教育内容に介入⇒26条1項に反しないか

1.背後に学習権の観念が存在

教育内容決定権の所在も学習権保障を充足するように解釈。

◆論証を展開する~必要かつ相当と認められる範囲において国の教育内容決定権あり。

2.これを教科書検定について検討する。

(1)普通教育~教育内容が正確かつ中立・公正で全国一定の水準であることが要請される

その要請を実現するため、国が不適正とする書籍を選別。しかしながら学問的な介入はしない。

⇒制度は手段として相当(論証②充足)。

(2)検定制度は誤った内容を子供に植え付けるような教育を強制しない→子供が自由かつ独立の人格として成長することを妨げず(論証①充足)

3.検定制度は26条1項に反しない。

第2 条件付き合格処分が教育内容への過度の国家介入として26条1項に反し、違憲か?

1.教科書の適格性判断は文科大臣の合理的裁量に委ねられる。⇒なんだけど、学問的介入が伴わないので裁量は小さい。⇒判断過程に看過しがたい過誤があり、文科大臣の判断がこれに依拠して行われた場合は当該判断は裁量権の範囲を逸脱したと考える。

2.本件では731部隊の存在、多数の捕虜を生体実験を加え殺害した2点は学会で定説化。それなのに文科大臣の判断に看過し難い過誤。

そして検定意見は看過し難い過誤に依拠してされた。⇒その判断は裁量権の範囲を逸脱。

3.本件条件付き合格処分は裁量権の範囲を逸脱するので26条1項に反し、違憲・違法である。

以上

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