行政法 短答式 1(行政裁量)

短答式 行政法

行政裁量の出題頻度

こんばんはマークです。行政裁量は短答式では毎年問われる項目であり、自分なりに検討。 内容は有益と思います。

行政裁量の定義 

定義:行政活動がすべて法律に拘束されないことの反面として行政に認められた判断の余地のこと。 

原則 :法律による行政の原則→行政活動は可能な限り法律で拘束すべき。だって人の権利とかを制約するのだから。 

でも 、現在社会は行政活動の領域が拡大。実際に行政を行っていく上で、専門技術的な判断や、迅速な対応が求められる。→行政の判断を一定限度尊重する必要がある。 

とはいっても 法律による行政の原理、法の支配の原理から、「行政裁量がある」といっても自由な裁量に委ねるのではなく、一定限度司法審査を及ぼして国民の権利を守る必要がある。 

だからこの行政の判断には裁量が認められるかとか認められないとかといったことが議論されるのだ。 

そこで行政裁量(に対する)の司法的統制方法を検討する。 

行政裁量の司法的統制~具体的な検討方法は以下3種類。考え方とそれを代表する判例を覚えておく必要がある。 

問題は判例をベースにした内容や、その行政裁量が認められるかどうかといった形で問われる。 

◆その1(実体的統制) 

・行政裁量は行訴法30条は「『裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合』に裁判所は取り消すことができる」としている。 

・具体的には、①重大な事実誤認、②法の目的に反する場合、不正な動機に基づく場合、③比例原則違反(重すぎる)の場合等には裁量権の逸脱濫用があったといえると解するもの。 

・代表的な判例は神戸税関事件(最判S52.12.20) 

☆判断代置ではなく、実体的統制(社会観念審査)で対応したので、問題としては「判断代置としましたかどうですか?」と聞かれる。 ちなみに判断代置は裁判所が裁量権者の立場で考えた場合に違う結果となったら違法となってしまい、行政に裁量権を認めませんとなってしまうので、考え方としてはよかったが実質的に使われていない。

~公務員に対する懲戒処分に対する裁判所の審査方法 

~神戸税関職員が同僚の職員の懲戒処分について抗議活動を行ったり、勤務時間中に職員増員要求運動を行った。 神戸税関長が国家公務員法に違反するとしてその職員に対して懲戒処分をした。それに対する取消訴訟。 

~判決は(懲戒権者と同一の立場に立って懲戒処分をすべきであったかどうか又はいかなる処分を選択すべきであったかについて判断し、その結果として懲戒処分とを比較してその軽重をろんずべきものではなく、)懲戒者の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法と判断すべきとした。 

◆その2(手続的統制) 

・行政裁量が認められても、行手法により統制されているときは、裁判所は、実体的に適法か否かとは別にその手続き自体の適法性を審査することができると解する。具体的には申請に対する処分は審査基準を決めて公表することが義務付けられているし、不利益処分の処分基準は努力義務が規定されている。 

裁判所は、手続を審査することで、裁量の認められる行政活動について司法的統制をしている。 

・判例 個人タクシー事件(S46.10.28) 

~免許申請の審査手続が、不公正の場合 → 却下処分に対する取消事由となるか? 

~陸運局長は申請が多かったので、内部で17の基準項目を設け、クリアしなかったら申請を却下していた。その基準項目を公表していなかった。また告知もされなかった。 →申請者は十分な主張・立証の機会を与えられず。→却下に対して取消訴訟を提訴。 

判決は、もし適正な手続により初めに下した処分と異なる処分に到達する可能性がないとは言えない 場合は、取消事由となるとし、本件はもし適正な手続きが取られていたら異なる処分、判断に到達する可能性がなかったとはいえない。→だから却下処分は違法。 

◆その3(判断過程の統制) 

・現在は行政過程が複雑→裁判所が行政活動結果について当否を判断することは困難なことが多い。 

・結果ではなく、判断形成過程においての行政裁量の不当について司法統制を及ぼすことが考えられ、恣意独断または多事考慮の有無を審査。よって裁量権の行使の適正を間接的に担保する。 

・具体的には行政庁が考慮すべきことを考慮しておらず、また、考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、社会観念上著しく妥当を欠く場合は違法と評価されうる。 

・判例(数が多い、代表的な3つ) 

・判例1 エホバの証人退学処分事件(最判H8.3.8) 

宗教の関係から必修の剣道の授業を受けず→代替措置をせず、2年連続留年→学力劣等で成業に見込みなしとして退学処分

判決~学力は優秀であったこともあり、考慮すべき事項を考慮しておらず、又は考慮された事実に対する評価が明白に合理性を欠き、結果、社会観念上著しく妥当を欠く処分→裁量の範囲を超える違法なものと言わざるを得ない。 

・判例2 呉小学校事件/広島県教組教研集会使用不許可事件(最判H18.2.7) 

学校の教室を使いたいと教職員組合が申請したがだめとなった判断に対して提訴。 

学校施設の目的外使用許可は原則管理者の裁量。ただし裁量権の行使が社会通念に照らして著しく妥当性を欠く場合は違法。 

たしか研修会を行ったら右翼団体がくるとかで周辺地域に混乱を招くのでというものだったはず。 

判決~裁量権行使の判断要素の選択や判断過程に合理性を欠くところがないかを検討し、その判断が、重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として違法となる。 

学校施設の目的外使用を許可するか否かは原則として管理者の裁量にゆだねられている。 

学校教育上の支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく、管理者の裁量判断は諸般の事情を総合考慮してされるもの。 

・判例3 小田急事件(H18.11.2) 

判決~裁判所が都市施設に関する都市計画の決定または変更の内容の適否を判断するにあたり、 基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠くこととなる場合、又は、事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念上に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合に限り裁量権の範囲を逸脱濫用したとして違法とするのが相当。 

まとめ

毎年出題される項目。基本的な条文とか定義(申請に対する処分基準は策定マストだけど、不利益処分の処分基準は努力義務)といったものが聞かれたり、判例の中身が聞かれたりする(最判〇年〇月〇日について判断過程審査をした(もしくは判決文そのものが書いてあったり、「○○ではなく××だ」といった判決についてこの判決は「〇〇と判断した」として内容の正誤と問う問題となっている。比較的聞かれる判例は頻出+今回限りといったものの組み合わせになっていることもあり、頻出分については最低押さえておく。ここ3年間で出されて、「ナニコレ?」と思ったのは、公有水面埋立法で1号と2号の違いを問われた時だ。その時は1号が政策的判断で、埋立ての目的、用途が適正かつ合理的であることが求められており、2号では環境配慮であることから専門的・技術的な判断が埋立行為そのものに関して必要となる環境保全措置等が求められ中で、設問は1号、2号それぞれ専門的。技術的な判断が必要となるでしょうか?といったものであった。H28の判決を知らなきゃ、なんだこりゃっていう感じの問題も出る。でもパターンとしては使えるかもと思う。考えて分かりそうなら対応し、分からなければ捨て問題とするのも時間の有効活用となる。

是非参考にしてみて下さい。

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