出題頻度:抗告訴訟の重要性
司法試験予備試験の行政法では、抗告訴訟(行政事件訴訟法に基づく訴訟類型)が頻出です。特に、処分性・原告適格・訴えの利益・訴訟要件・救済の可否といった論点が、短答・論文ともに繰り返し問われています。
これらは行政法の根幹をなすテーマであり、判例の理解と条文の正確な適用が合否を分けます。
分量もかなり多いので3回構成ぐらいで対応します。
抗告訴訟の基本構造と分類
抗告訴訟は、行政事件訴訟法に基づく以下の6類型に分類されます。
ア)類型 イ) 内容 ウ) 代表的条文
- ①ア) 処分の取消訴訟 イ)違法な行政処分の取消しを求める ウ)行訴法3条2項
- ②ア)裁決の取消訴訟 イ)違法な裁決の取消しを求める ウ)行訴法3条3項
- ③ア) 無効等確認訴訟 イ) 処分の無効確認を求める ウ)行訴法3条4項
- ④ア)不作為の違法確認訴訟 イ)行政庁が処分をしないことの違法性を争う ウ)行訴法3条5項
- ⑤ア)義務付け訴訟 イ)行政庁に一定の処分を命じる ウ)行訴法3条6項
- ⑥ア)差止め訴訟 イ)公権力の発動をしないことを求める ウ)行訴法3条7項
頻出論点と覚えるべきポイント(要認識)
・処分性、原告適格、訴えの利益については判例が中心に問われる
・無効等確認の訴えは条文と判例両方が問われる
・義務付け訴訟、事情判決、第三者効とかは条文が聞かれる
・抗告訴訟というくくりで、判例も聞かれる(差し止めの訴え、将来の不利益処分の予防を目的とした当該処分の前提となる公的義務の不存在確認を求める無名抗告訴訟、判例の内容の正誤そのものを問われる。)
・審理は条文
・仮の救済(仮の義務付け、仮の差し止め)は条文
これらを踏まえ検討していく。
取消訴訟(処分の取消訴訟)
(1)定義~「行政庁の処分その他公権力の行使にあたる行為の取消を求める訴訟」(3条Ⅱ)
公定力があり、取り消されるまでは有効。処分があったことを知った日から6か月以内に提訴する必要がある(不可争力、14条Ⅰ)。
(2)処分の取消訴訟と審査請求については8条が規定。どちらでもOKだが、法律に審査を先にしなさいとなっていたら先に審査請求をしなければならない。
裁決の取消訴訟
長いので詳細は割愛。
原処分主義は覚えておこう。~原処分の違法を主張するときは処分の取消を提起しなければならず、裁決の取消の訴えにおいては原処分の違法性を争えず、理由付記が不十分だったとか、物件の閲覧を不当に認めなったという裁決固有の瑕疵しか主張できない。
訴訟要件(取消訴訟の訴訟要件)
まず入口のところで揃っていないと相手にされない要件がある。大きく4種類。
満たしていれば本案判決。満たさなければ却下判決。
①処分性、②原告適格、③狭義の訴えの利益、④その他 となっている。順に内容確認。
①処分性(行政事件訴訟法3条2号)
・処分性がないと訴訟の対象にならない。
・「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為で、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定するもの」(S39.10.29~マストで覚えるべき定義)
・「法的効果」の有無が判断基準~法的効果とは→法律上の権利や義務が発生、変更、消滅すること
(処分性が認められるもの)
(a)行政行為
行政行為には処分性が認められる。処分性の意義は以下の判例をマストで覚えること。
「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為で、直接国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定することが法律上認められているもの」(S39.10.29)
(b)法律の規定を根拠に取消訴訟の対象となるもの
・行政上の不服申し立てに対する行政庁の決定・裁決は取消の対象(3条3項)。
(c)形式的行政行為
・行政行為に該当せず、法律上訴訟形式として取消訴訟が指定されていない行為でも取消訴訟を提起することができる場合あり。
・税務署長の納税の告知、関税定率法に基づく税関長の決定・通知、行政代執行法上の戒告の通知、供託官が弁済供託における供託金取戻し請求を却下する行為等がそれらにあたる。観念の通知という事実上の行為であって、行政行為ではないが処分性が認められている。
・税務署長の納税告知 S45.12.14~税務署長の意見が初めて公にされるもの→取消訴訟の対象となる
・税関検閲事件 S54.12.25 ~関税定率法に基づく税関長の決定・通知~関税法上の通知によって生じた法律上の効果だ→取消訴訟の対象となる
・行政代執行法上の戒告 大阪高決S40.10.5 ~行政代執行法上の戒告行為~代執行の前提要件であり、代執行がほぼ行われることを示す→取消訴訟の対象となる~行政代執行法上の戒告とは行政庁が義務者に対して「この義務を果たさないと代執行を実行しますよ」と文書で予告、警告する行為。
・弁済供託取戻し却下(S45.7.15)~供託官が行う却下行為~公益上の目的から供託官に供託事務を取り扱わせることとしたので供託官が取戻し請求を受けたときは単に寄託契約の当事者の地位にとどまらず、行政機関としての判断をする権限を与えたので、却下行為は行政処分→取消訴訟の対象となる
(d)処分性の概念の拡張~近時は処分性をより広く柔軟に認める方向。
・検疫所長の食品衛生法違反の通知(H16.4.26)~食品衛生法上の許可がないと税関審査が通らないので法的効力を有するものと解される→取消訴訟の対象となる。
・労災就学援護費の不支給処分(H15.9.4)~労基所長の判断は一方的に行う公権力の行使→取消訴訟の対象となる
・病院開設中止勧告(H17.7.15)~勧告なので本来処分ではない。しかし従わなければ保険医療機関の指定を受けられないので、開設を断念せざるを得ないことになる→取消訴訟の対象となる
(処分性が認められないもの)
直接国民の権利義務を形成しないもの、範囲を確定しない行為は原則処分性なし。以下に分類。
(a)行政機関相互の行為~通達、内部的になされる承認・許可
・墓地、埋葬等に関する通達(S43.12.24)~①一般の国民は直接拘束されない②行政機関が通達に反する処分をしても効力は左右されない③裁判所は独自の判断ができる→取消訴訟の対象とならない
・成田新幹線訴訟(S53.12.8)~運輸大臣から鉄建公団への工事計画認可は行政機関相互の行為→対象とならない
(b)法的な効果を有しない行為~事実行為(法的な効果を有しないということ)
・H7.3.23 都市計画法上の開発行為への同意を拒否する行為は別に開発行為を禁止、制限するものではない→対象とならない
・S34.1.29 建築許可の要件とされる消防長の同意は行政機関相互の行為→対象とならない
・H21.4.17 出生した子、出生届が不備で提出されていないこについて、住民票の記載を親が申し出→区長が記載しないと回答したがこれは法令に根拠のない事実上の応答にすぎない→対象とならない
・S57.5.27 公務員の採用内定通知の取消は単に採用発令の手続きを支障なく行うための準備手続きとされる事実上の行為にすぎない→対象とならない
・H11.1.21 住民票への続柄記載行為は選挙人名簿に登録されるかどうかには全く影響がない→処分性は認められない
・S57.7.15 道路交通法違反による反則金の通告~許されると仮定すると本来刑事手続きで対応するものが行政訴訟で処理することになり複雑化してしまう→取消訴訟の対象とはならない。
(c)規範定立行為
・法律、条令等の制定行為は一般抽象的権利義務を生じさせるにとどまるが、特定人に具体的な法的効果を及ぼすと解釈できれば処分性肯定の余地あり。
・H21.11.26 保育園廃止条例~①その施行により保育所廃止の効果が発生②現に入所中の児童。保護者という限られた特定の者に対し直接保育を受けることを期待しうる法的地位を奪う→行政処分にあたる
・H18.7.14 給水条例無効確認等請求事件~水道料金を一般的に改定するもの→改定は処分にあたらない
(d)公権力の行使にあたらない行為
法が認めた優越的な地位に基づき、行政庁が法の執行としてする権力的な意思活動ではない、私法上の契約を締結する行為。
・S35.7.12 国有財産払い下げ~払い下げ許可の形式はあれど私法上の売買にすぎない→処分性なし
まとめ
まずは行政事件訴訟(抗告訴訟)の概要と取消訴訟の訴訟要件における「処分性」について自分なりにまとめてみた。ここは複数問出題される。処分性においては判例の内容が問われるので、かたまりとかキーワードで覚えていこう。


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