概要説明
行政事件訴訟法は網羅する内容が多いことから複数回に分けてまとめていく。取消訴訟における訴訟要件があり、前回はそのうちの一つ処分性までをまとめてみました。今回はその続きで原告適格について進めていきたいと思います。
②原告適格(行訴法第9条1項)
(1)概念
◆処分の取消を求めて提訴することができる資格のこと。明文で規定された訴訟要件である。
◆法律上の利益を有する者に限り提起できる。
◆直接の名宛人が取消を求めることに特段問題はない。第三者が処分の取消を求める場合が問題。
(2)法律上の利益の解釈について~二つの説
ⅰ)法律上保護された利益説~法律上の利益を「法律上保護された利益」と解する説。
→法律の規定の解釈から決定していく。
ⅱ)法的な保護に値する利益説~裁判上の保護に値すると考えられる利益と解する説。
→実定法の解釈ではなく、原告が実際に侵害される利益の程度など利害の実態にフォーカスして、その利益が裁判上保護に値するか否かを判断する。
~判例での実際の運用は①法律上保護されている利益説 に立ちつつ、実体法の解釈を柔軟に実施し、原告適格の範囲が拡大される。
(3)判例の考え方
一貫して法律上保護された利益説。法律上の利益を有する者について「当該処分により自己の権利もしくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害される恐れのある者をいう」と定義し、「当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてのこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益にあたり、~原告適格を有する」と定式化している。
◆H25.7.12 滞納者と他の者の共有にかかる不動産で滞納者の持ち分が差し押さえられた。→他の共有者は差押え処分の法的効果による権利の制限を受ける→他の共有者は原告適格を有する。
(4)9条2項~H16年改正で新設。第三者の法律上の利益を判断するにあたって!!
法律上の利益を解釈する際に考慮すべき事項について基準を明示。当該処分の形式的文言のみでなく、①「当該法令の趣旨及び目的」、②「当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質」を考慮し、①を考慮する際に、③「当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨および目的も参酌する。②を考慮するに際し、④「当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度も勘案する」こととされている。
(5)具体的な判例
(a)競業者・競願者
新規参入者に許可が与えられた際に既存業者がその処分取消を求める。他の競願者に与えられた許可に対して許否された競願者が取消の訴え。
・病院開設についての他施設開設者の原告適格(H19.10.19)→医療法は当該病院の開設地の付近で医療施設を開設している者等の利益を考慮することを予定していない。→原告適格なし。
・公衆浴場の既存の営業者の利益(S37.1.19)→被許可者を濫立による経営の不合理から守る意図もある→原告適格あり。
・東京12チャンネル事件(S43.12.24)~放送局開設免許が競願者に付与された場合、自己への許否処分の取消だけでなく、競願者への免許処分取消も訴えることができる。→原告適格あり。
(b)規制法による付近住民
当該規制法の解釈を通じて、付近住民に法律上保護された利益があるといえるか、それとも反射的利益にすぎないかによって個別的に判断。リーディングケース2つ→その後柔軟に。
・新潟空港事件(H1.2.17)~当該処分を定めた行政法規が不特定多数者の具体的利益を、それが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、どのように判断すべきか。→当該行政法規及びそれと目的を共通する関連規定の関係法規によって形成される法体系の中において、当該処分の根拠規定が、個々人の個別的利益をも保護すべきものとして位置づけられているかによって判断すべきである。
・もんじゅ訴訟(H4.9.22)~当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を、それが帰属する個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むか否かの判断において考慮すべき要素は何か?→当該法規の趣旨・目的、保護しようとする利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである。
~原告適格の範囲の拡大
・H9.1.28 都市計画法は開発区域内の土地が崖崩れの恐れの多い土地等にあたる場合は直接的な被害を受けることが想定される開発区域内外の一定の地域の住民の生命身体の安全を個々人の個別的利益として保護→原告適格が認められる。
・H14.1.22 建築基準法および都市計画法に基づく総合設計許可については建築物の倒壊・炎上等により直接的に被害を受けることが予測される範囲の建物の居住者・所有者に対して→原告適格を肯定。
・小田急事件 H17.12.7~行訴法9条2項を踏まえ、事業地内の地権者のみならず、都市計画事業の事業地周辺に居住する住民のうち、事業が実施されることにより騒音や振動等による健康または生活環境に著しい被害を直接的に受ける恐れのあるもの→広く原告適格を認めた。
・風営法・パチンコ店(H10.12.17)~東京都公安委員会がパチンコ店開設を許可。周辺住民は原告適格はあるか?→専ら公益保護の観点から基準を定めたもの→原告適格は認められない。
・墓地に対する経営許可処分(H12.3.17)~近隣住民は原告適格あるか?→公益的見地から墓地経営の許可に関する諾否の判断をするもの。個人的な利益は含まれない。→原告適格は認められない。
・場外車券売場事件(H21.10.15)~自転車競技法に基づく場外車券発売施設の設置許可の取消訴訟について誰が原告適格を有するのか?→場外車券施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生じる恐れがあると位置的に認められる医療施設等の関係者は原告適格を有する。それ以外の周辺住民、事業者、医療施設の利用者は原告適格を有しない。
(c)一般消費者~最高裁は否定の方向が強い。
・主婦連ジュース事件(S53.3.14)~主婦連を構成する個々の一般消費者の利益は、法律上程された利益とは言えない→原告適格は認められない。
・近鉄特急事件(H1.4.1.13)~鉄道の利用者に特急料金の改定認可処分の取消を求める原告適格があるか?→認められない。
・伊場遺跡保存事件(H1.6.20)~遺跡を研究対象としてきた学術研究者には史跡指定解除処分の取消を求める原告適格があるか?→県民の利益は公益の中に吸収解消させ、その保護は専ら公益の実現を通じて図ることとしていると解される。→認められない。
(d)住民団体等
侵害される利益が住民共通の集団的な利益の場合→多数人がそれぞれ主張するより代表者が原告となって訴訟提起した方が便利。住民団体とか消費者団体に原告適格が認められるか?→判例は認めていない(各個人が提訴すればよいという考え方)。ただし肯定説の見解もある。
まとめ
本日はここまで。原告適格については判例の内容が問われるのできちんとイメージを確立しておこう。


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