ベース強化(被疑者の身柄拘束)刑訴 短答3

短答式 刑事訴訟法

はじめに

さて、本日は捜査分野のなかから被疑者の身柄拘束についてやっていきましょう。ベースの部分ではあるが、論点がそこそこあります。では、はじめましょう。

問われること

基本的な原則、条文問題、説に絡んだ正誤問題等が問われます。説に関しては一応、考え方をⅠ、Ⅱ、Ⅲというような感じで書いてあり、Ⅰの考え方によるとア内容は正しいでしょうか、間違っているでしょうか、といった感じで聞かれます。説に対する批判等は軽く押さえておいても良いかもしれません。

覚えよう

それでは順番にポイントを絞って覚えていきましょう。

◆身柄拘束には逮捕と勾留がある。勾留には被告人勾留と被疑者勾留がある。

◆身柄拘束期間:逮捕は最長72時間(警察で48時間、検察で24時間、203条以下)。被疑者勾留は原則10日間、場合により10日間延長できる。注意だが、10日間については初日を参入する。また検察官が請求した日から起算するので注意!!20日が最長(内乱罪とかは25日)。

◆逮捕前置主義:まず逮捕がないと勾留できない。(207条Ⅰ)

◆通常逮捕:令状による(憲法33条)。逮捕状の請求は前回やったが、検察官または警部以上の司法警察員(199条Ⅱ)。裁判官は①逮捕の理由(罪を犯したと疑うに足りる相当な理由)、②逮捕の必要性(逃亡、罪証隠滅のおそれ)を審査。出頭してこない被疑者に対する逮捕の必要性は認められない(否定説、198条Ⅰに出頭を拒むことができる と規程されている)。

◆現行犯逮捕(212条Ⅰ)~今犯罪を行っている者、今まさに犯行を終えたもの+準現行犯。令状主義の例外。理由なき逮捕がなされる可能性が低く、逮捕しなくては逃亡されてしまう。

・要件は「現行犯人であること」(①犯人であることの明白性、②実行行為と逮捕の着手の時間的接着性)と「逮捕の必要性」があること。)⇒①には現認が原則だが、現認していない場合でも現場の情況や被害者の身体・衣服の状況、被逮捕者の挙動といった客観的事情を逮捕者が認識していたりすればOKとされる。

・時間的接着性:犯行と、逮捕者による逮捕の着手との間での関係。

・逮捕の必要性:現行犯逮捕にもこれが求められる。逃亡や罪証隠滅のおそれがそれにあたる。30万円以下の罰金等の罪については犯人の住所または氏名が不明、または逃亡のおそれがないと逮捕できない。

◆準現行犯人:212条2項の①~④に該当し、罪を行ってから間がないと明らかに認められることが必要。

・①~④号の内容:①犯人として追呼されているとき、②贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を現に携帯しているとき、③身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、④誰何されて逃走しようとするとき。

◆緊急逮捕(210条Ⅰ)~要件は実体要件が3つ。①死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪(重大性)、②罪を犯したことを疑う充分な理由がある(嫌疑の充分性)、③急速を要し、逮捕状を求めることができない(緊急性)。

・逮捕後は直ちに逮捕状請求手続きが必要。

・この逮捕状の請求は検察官、検察事務官、司法警察職員ができる。⇒全体でみれば令状による逮捕ということになり合憲と理解される。

◆逮捕後の手続きは権限行使(刑訴の第1回をご参照)。

◆立入り・捜索、実力行使~逮捕に伴い必要がある時にはできる。捜索許可状は不要。実力行使は必要かつ相当な範囲に限定して許される。

◆勾留:被疑者・被告人を拘束する裁判およびその執行。その裁判は被疑者と第1回公判期日までの被告人については裁判官が行い、それ以降は裁判所が行う(刑訴短答1ご参照)。

・実体的要件:勾留の理由(罪を犯したと疑うに足りる相当の理由、住居不定・罪証隠滅・逃亡のおそれのいずれか1つ)、勾留の必要性(勾留の相当性)

◆被疑者勾留の問題点

・手続的要件:①逮捕前置が必要、②検察官からの請求(被告人勾留と異なり、裁判所や裁判官の職権ではできない)、③勾留質問(被疑事実を告げ、被疑者の陳述を聞き、弁護士選任できる旨を告げなくてはならない)、④勾留の裁判

・先行逮捕が違法だったら勾留はどうなる?:軽微な違法の場合は認められる。逮捕手続きに重大な違法がある場合には認められない。

◆逮捕・勾留をめぐる問題点

・事件単位の原則:逮捕・勾留の効力は、手続上明示的に被疑事実とされた犯罪事実にのみ及ぶ。

・勾留の理由の付加:A事実で逮捕した被疑者をA事実とともにB事実で勾留はできるのか?⇒A事実では逮捕前置が満たされる場合はOK。被疑者にとって時短となる。

・一罪一逮捕一勾留:科刑上一罪を含む実体法上1個の犯罪を分割して複数の逮捕・勾留とすることはダメ。

・再逮捕・再勾留の禁止:ただし逮捕の蒸し返しとはいえない場合にはOK。

◆別件逮捕~説があるので覚えておこう。~本件の取調べのため、別件で逮捕すること。

・別件基準説(警察実務):違法となるのは別件についての逮捕の要件を欠く場合だけ。

・本件基準説(多数説):別件逮捕が専ら本件について取り調べる目的でなされた場合は違法。客観的な事情で推知する(①本件についての捜査状況、②別件についての逮捕・勾留の必要性の程度、③別件と本件との関連性・軽重の差、④身柄拘束後の取調べ状況 を総合的に判断。

・別件基準説は逮捕して何か問題があるのかというし、本件基準説はそれは別件基準は濫用だという。

・別件逮捕の効果:逮捕状請求、勾留請求は違法であれば却下される。取調べも違法。そこでの自白には違法収集証拠排除法則が適用され、証拠能力が否定される。

◆任意同行:規定ないので実質逮捕じゃないかといって問題となることがある。真の同意があるかないかで判断するが、同行を求めた時期・場所・同行の方法・態様・必要性・同行後の取調べ時間・方法・監視の状況・被疑者の対応の仕方等を総合して判断。


過去問(法務省HPより)

・R5

〔第16問〕
後記【事例】に関する次のアからオまでの【記述】のうち、【見解】に示す考え方からの帰結として正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。
【事例】
甲には、乙宅において、乙に対して暴行を加え、その反抗を抑圧して、乙所有の財布を強取したという強盗の事実の嫌疑が認められる。
【見解】
Ⅰ.逮捕に引き続く勾留の理由となる被疑事実は、先行する逮捕の理由とされた被疑事実と同一のものでなければならない。⇒逮捕前置主義
Ⅱ.実体法上一罪の関係にある被疑事実を理由とする身体拘束は、一回に限り認められる。⇒一罪一逮捕一勾留
Ⅲ.身体拘束に関する処分は、明示的に身体拘束の理由とされている被疑事実について行われるもので、それ以外の事実のみに基づいて行われてはならない。⇒事件単位の原則
【記述】
ア.【見解】Ⅰによれば、検察官は、甲が【事例】中の強盗の被疑事実について逮捕された場合に、逮捕中の捜査の結果を踏まえて恐喝に評価を改め、その逮捕に引き続き、乙に対する恐喝の被疑事実を理由として甲の勾留を請求することはできない。⇒〇 強盗で逮捕、恐喝で起訴はOK(厳格な一致までは不要。事実の共通性があればOK。どちらも暴行・脅迫で財物奪取。)
イ.【見解】Ⅰによれば、検察官は、甲が【事例】中の強盗の被疑事実について逮捕された場合に、これに引き続いて、別に判明した、甲の丙に対する強盗の被疑事実のみを理由として甲の勾留を請求することはできない。⇒〇 その通り
ウ.【見解】Ⅱによれば、司法警察員は、【事例】中の強盗の被疑事実を乙に対する暴行の被疑事実と乙に対する窃盗の被疑事実に分割し、甲が暴行の被疑事実で逮捕、勾留された後に、改めて、窃盗の被疑事実で逮捕状を請求することはできない。⇒〇 その通り 分割はできない。
エ.【見解】Ⅱによれば、司法警察員は、甲が【事例】中の強盗の被疑事実について逮捕された後、これに引き続く勾留請求が却下された場合に、甲が【事例】中の強盗を行うための手段として乙宅に侵入した旨の住居侵入の被疑事実(【事例】中の強盗の被疑事実と牽連犯の関係に立つものとする)を理由として、甲の逮捕状を請求することができる。⇒× 一罪一逮捕一勾留は分割できない。
オ.【見解】Ⅲによれば、検察官は、【事例】中の強盗の被疑事実を理由とする勾留の延長を請求するに当たり、並行して実施している別の被疑事実の捜査から判明した事情は、前記強盗の被疑事実に関連するとしても、これを示すことはできない。⇒× 使える(208条2項、余罪Bの捜査で偶然判明したAに関係する事情を精査する為に本件を延長する論理。事件単位の原則に反せず。)
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ ⇒答え3のイウ

・R6

〔第19問〕
私人による現行犯逮捕に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。
ア.私人は、急速を要する場合に限り、その理由を告げた上で現行犯人を逮捕することができる。⇒× 急速は求められていない。
イ.司法警察員は、私人から現行犯人の引渡しを受けた場合、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。⇒× 逮捕状は不要(私人が逮捕できるのは現行犯か準現行犯)
ウ.私人が現行犯逮捕する場合には、その私人が犯行を現に目撃していなければならない。⇒× 212条2項各号(①~④)該当+犯行から間がない であればよく、目撃は不要。
エ.司法警察員は、私人から現行犯人の引渡しを受け、留置の必要があると思料する場合、逮捕された時からではなく、その者を受け取った時から、48時間以内に検察官に送致する手続をしなければならない。⇒× 逮捕された時から起算。
オ.現行犯人を逮捕した私人は、逮捕の現場で令状によらずに捜索差押えをすることができる。⇒× 私人は捜索差押はできない。
1.0個  2.1個  3.2個  4.3個  5.4個  6.5個 ⇒ 答え 1の0個

・R6

〔第21問〕
被疑者の勾留に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
ア. 裁判官は、勾留の請求を受けて被疑者に被疑事件を告げる際、被疑者が既に弁護人を選任している場合でも、弁護人選任権を告げる必要がある。⇒× 207条Ⅱ 被疑者に弁護人があるときはこの限りでない。
イ. 30万円以下の罰金に当たる刑法の罪に係る事件については、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、かつ、逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある場合であっても、被疑者の住居が不定でなければ被疑者を勾留することはできない。⇒〇 60条Ⅲ 定まった住所を有しない場合のみ。
ウ. 検察官から勾留の請求があった翌日に裁判官が被疑者を勾留する旨の裁判をした場合、その勾留期間は、同裁判があった日から起算する。⇒× 208条Ⅰ 検察官の請求があった日から起算する。
エ. 勾留されている被疑者について、裁判官が接見禁止の裁判をした場合、被疑者の弁護人であっても、被疑者と接見することはできない。⇒× 81条、39条 弁護人は接見できる。
オ. 勾留されている被疑者に対する接見禁止の裁判は、検察官の請求がなくとも、裁判官が職権ですることができる。⇒〇 81条 検察官の請求または裁判所の職権で。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ ⇒答え 3のイオ

・R7~別件逮捕の問題。説が3つになっている

〔第16問〕
次のⅠないしⅢの【見解】は、逮捕・勾留の要件が備わらないA事実での逮捕・勾留に先立って、逮捕・勾留の要件が備わっているB事実で逮捕・勾留する場合の適法性に関するものである。【見解】に関する後記アからオまでの【記述】のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
Ⅰ.B事実について逮捕・勾留の要件が備わっていたとしても、捜査機関がB事実による逮捕・勾留を専ら又は主としてA事実の捜査に利用する意図である場合には、B事実による逮捕・勾留は実質的にA事実による逮捕・勾留と評価され、違法となる。⇒本件基準説(事前抑止を重視。目的が本件の取調べならルール違反だ!)
Ⅱ.B事実について逮捕・勾留の要件が備わっているか否かを基準に適法性を判断すべきであり、B事実について逮捕・勾留の要件が備わっている限り、B事実による逮捕・勾留は適法である。⇒別件基準説(形式重視、別件に逮捕の理由があればいいじゃん)
Ⅲ.B事実によって逮捕・勾留された後の身体拘束期間が主としてA事実の捜査のために利用されるに至った場合には、それ以降の身体拘束は、B事実による逮捕・勾留としての実体を喪失し、A事実による身体拘束となっていると評価され、違法となる。⇒実体喪失説(最初は別件の逮捕で有効でも中身が本件ばかりならダメだよ)
【記述】
ア.Ⅰの見解でも、B事実による身体拘束期間にB事実の取調べと並行してA事実の取調べを行った場合、その身体拘束が違法にならないことがある。⇒〇 その通り
イ.Ⅱの見解では、B事実による身体拘束が適法に行われたものである以上、仮にその身体拘束期間中に専らA事実の取調べが行われており、B事実の取調べが全く行われていないような場合でも、A事実の取調べが違法となることはない。⇒× それはダメだ。
ウ.Ⅲの見解は、逮捕・勾留期間につき、その理由とされた被疑事実について被疑者の逃亡・罪証隠滅を防止した状態で起訴・不起訴の決定に向けた捜査を行う期間であると捉える考えと整合しない。⇒× 整合する。被疑事実をきちんとやりなよ。
エ.Ⅰの見解に対しては、逮捕・勾留の場面において、裁判官が捜査機関の意図・目的を審査することは現実的には容易ではないとの批判がある。⇒〇 その通り(批判となる)
オ.Ⅱの見解に対しては、捜査機関による身体拘束の濫用という問題の本質を無視する考え方であるとの批判がある。⇒〇 その通り(批判となる)
1.ア イ   2.ア エ   3.イ ウ   4.ウ オ   5.エ オ ⇒答え3

・R7~簡単に時系列を書いた方が良い問題。

~7/15 1:15PM逮捕~7/17 1:00PM送検~7/18 12:00PM勾留請求…27日までだな。

〔第19問〕
次の【事例】について述べた後記アからオまでの【記述】のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。
H県I警察署の司法警察員Xは、同県内の時計店で発生した高級腕時計を被害品とする窃盗事件について捜査に従事していたところ、令和6年7月15日午後1時頃、I市内の飲食店で無銭飲食があったとの通報を受けて同店に急行し、同日午後1時15分、同店内にいた甲を詐欺罪の現行犯人として逮捕した。甲は、逮捕後の取調べにおいて、逮捕時に所持していたショルダーバッグ内に入っていた新品の高級腕時計について、「これは趣味で集めている時計で、海外で自分で買ったものだ。」と供述した。Xは、前記窃盗事件及び前記詐欺事件について、それぞれ被害店舗の実況見分や被害店舗従業員らの取調べを行った上で、同月17日午後1時に詐欺罪の事実で甲をH地方検察庁検察官に送致する手続をした。同日午後1時30分に甲の送致を受けたH地方検察庁検察官Yは、甲に弁解の機会を与え、留置の必要があると判断したので、同月18日正午、H地方裁判所裁判官に、詐欺罪の事実で甲の勾留を請求し、同裁判所裁判官Zは、同日午後3時、被疑者を甲、罪名を詐欺とする勾留状を発付した。これを受けて、司法警察員Xは、同日午後4時、同勾留状を執行した。その後、甲の勾留期間は延長されなかった。
【記述】
ア.検察官Yは、令和6年7月18日正午に勾留を請求しているが、同日午後1時30分までに勾留を請求すれば足りる。⇒× 205条Ⅱ 72時間を超えないこと。
イ.検察官Yは、裁判官Zが、罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がないことを理由として勾留請求を却下した場合、これに不服があるときでも、H地方裁判所に対し、その裁判を取り消して甲を勾留するよう請求することは許されない。⇒× 429条Ⅰ② 準抗告はできる!!
ウ.詐欺罪の事実について勾留の理由又は必要がなくなった場合、検察官Yは、窃盗罪の事実について捜査の必要があることを理由として甲の勾留を継続することは許されない。⇒〇 事件単位の原則 詐欺罪のみで勾留されているので。
エ.検察官Yが、窃盗罪の事実について甲を逮捕しないまま、詐欺罪の事実に窃盗罪の事実を併せて勾留を請求した場合、勾留請求を受けた裁判官は、詐欺及び窃盗のいずれについても勾留の理由及び必要性が認められると判断したとき、両罪について勾留状を発付することができる。⇒〇 勾留期間の短縮に資する+いずれにしてもA罪で勾留される。
オ.甲の勾留期間の満了日は、令和6年7月27日である。⇒〇 初日は参入する。
1.ア イ   2.ア ウ   3.イ オ   4.ウ エ   5.エ オ⇒答え1


まとめ

基本条文問題なのでしっかりと条文を理解しておこう。



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