はじめに
刑訴第1回の時に話しましたが、刑訴に関しては捜査分野と公判分野に大きく分かれています。今回は捜査分野に関して最後となります。では始めます。
問われること
検証としての身体検査(捜索、鑑定との違い)、強制採尿(判例の判断等)、写真撮影の可否、
接見交通(ここは条文と判例が聞かれるので注意が必要だ)のあたりが聞かれます。
覚えよう
◆検証
・意義:場所、物または人について、強制的にその形状や性質を五官の作用で感知する処分。同じ内容でも任意であれば実況見分となる。
・原則令状が必要(218条Ⅰ)。逮捕に伴うものや逮捕・勾留されている被疑者の指紋採取等に関しては無令状でOK。
◆鑑定
・意義:特別の知識経験を有する者による事実の法則またはそれを具体的事実に適して得た判断の報告のこと。捜査機関は専門家に嘱託することができる(223条Ⅰ)。
・鑑定受託者は鑑定処分許可状により強制処分を行う(住居立入り、身体の検査、死体の解剖、墳墓の発掘等)。鑑定留置して被疑者の心神、身体に関する鑑定をさせることができる。
◆身体検査~3種類ある(①捜索として②検証として③鑑定処分として)。
・①には捜索許可状が必要(218条1項前段)、逮捕時は無令状OK。②身体検査令状が必要。逮捕・勾留されている被疑者の指紋等は裸にしない限り無令状でOK。③鑑定処分許可状が必要。
・3つの区別の仕方~通説と判例で違う。通説は①着衣のまま、②全裸にしてとか内部的検査・レントゲン等、③身体への侵襲を伴う(血管からの採血等)。判例は強制採尿で説明。
◆採尿
・覚醒剤使用の有無を調べたりする。通常は任意提出⇒領置。任意提出しなければ強制的にカテーテルで強制的に取得する。
・そもそも強制採尿は良いのかという点については通説は許されるとしている。被疑事実の重大性、嫌疑の存在、証拠の重要性、取得の必要性、代替手段の不存在等を勘案し、犯罪捜査上真に已むを得ないと認められる場合は最終手段としてアリとしている。
・どの令状がいるのか?という点で色々な説があり。
①鑑定処分許可状説~身体内への侵襲を伴う⇒鑑定処分としての身体検査だね⇒鑑定処分許可状が必要 と考える説。でも鑑定受託者は直接強制ができない(224条4項が139条を準用する172条を採用していない。よってこの説では採尿を直接強制できない。
②鑑定許可状+身体検査令状併用説~直接強制すべく併用するという説。令状の併用は便宜的すぎるとの批判あり。
③身体検査令状説~端的に身体検査令状によるべきとする説。身体内部への侵襲を伴う以上検証の程度を超えると言わざるを得ない。
④条件付捜索差押許可状説~判例。医師にやらせなければいけないという条件付きの捜索差押令状によるべきとした。
◆強制採血:尿(老廃物)とは違い、体の一部であるため上記②の説が妥当。
◆写真撮影については割愛
◆おとり捜査も割愛
◆GPS捜査:個人の意思を制圧して(意思に反して)、憲法の保障する重要な法的利益を侵害。刑訴上、特別の根拠規定がなければ許与されない強制の処分にあたる」とした。
◆被疑者の防御活動
・準抗告:意外と出題される。①裁判官のした勾留や押収に関する裁判、②捜査機関のした接見指定、押収・押収物の還付に関する処分等 に対し準抗告をすることができる(429条、430条)。逮捕に対してはできない。
・被疑者の立会:捜査機関の捜索・差押えについて被疑者や弁護士の立会権はない。注意だが、裁判所がやるときに関しては権利あり。
・証拠保全請求:第1回公判期日前に限ってOK。
◆接見交通権~被疑者が弁護士や弁護士となろうとするものと立会人なしに接見し、書類や物の授受をする権利(39条Ⅰ)~憲法34条由来
・でもこれから実況見分に行くとかでダメな時がある⇒捜査機関が日時場所を指定することができる。~接見指定ができる要件としては①捜査の為に必要があるとき、②公訴の起訴前であること、③被疑者の防御の準備を不当に制限するものではないこと となる。
・捜査機関が接見指定できるのは被疑者のみ。被告には原則できない。
・被告人が被疑者でもある場合はどうなる?~難しそうに見えるけど簡単。
①接見指定が被告事件の捜査の必要性を理由とする場合~公訴提起前にしかできないのだからそもそも条件をみたさず接見指定できない。
②接見指定が被疑事件の捜査の必要性を理由とする場合
~②-1:被疑事件での身柄拘束がない場合⇒接見指定は身柄拘束を前提とする制度なので身柄拘束がなければ接見しての前提を欠く。
~②ー2:被疑事件での身柄拘束がある場合⇒被告事件について防御権の不当な制限にわたらない限り接見指定はOKとした。
◆接見の場所と面会接見等~通常は接見室だが、そういった場所がない場合~場所がないことを理由に適法に拒否できる。これはしっかりとし場所でないところで接見させて逃亡や証拠隠滅等をされては困るからである。ただしなおも弁護人が即時の接見を求め、その必要性があると認められる場合は秘密交通権が十分に保障されない態様の短時間接見(面接接見)ができるよう特別の配慮をすべき義務が検察官にはあると判例は判断している。
過去問(法務省HPより)
・R5
〔第18問〕
身体検査等に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものには1を、誤っているものには2を選びなさい。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。
ア.裁判所が女子の身体を検査する場合でも、捜査機関が身体検査令状により女子の身体を検査する場合と同じく、医師又は成年の女子をこれに立ち会わせる必要がある。⇒〇 条文通り 131条
イ.身体の拘束を受けている被疑者を写真撮影する場合、必ず身体検査令状によらなければなら
ない。⇒× 拘束されている者には写真は無令状でOK。
ウ.捜査機関が人の着用しているズボンのポケットの中を捜索して物を差し押さえるためには、捜索差押許可状のほかに、身体検査令状の発付を受ける必要がある。⇒× ポケットの中は捜索差押令状でOK。
エ.捜査機関から鑑定の嘱託を受けた者は、鑑定処分許可状に基づき行う身体検査を拒否する者に対して、直接強制として身体検査を行うことができる。⇒× できないのだ。嘱託だと直接強制が準用されていないので、身体検査令状も併せて必要。
オ.強制採尿のための捜索差押許可状には、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠である。⇒〇 その通り。判例である。
・R6
〔第26問〕
強制採尿に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。
ア.膀胱にたまっている尿は物ではなく身体の一部であるから、捜索差押許可状によって、強制採尿を行うことはできない。⇒× 老廃物なので捜索差押許可状でOK。ただし医師をして、医学的に相当と認められる方法によらなければならないという条件付きとなる。
イ.強制採尿は、尿道にカテーテルを挿入するという身体への侵襲を伴うから、鑑定処分許可状が必要である。⇒× 捜索差押許可状でOK。
ウ.強制採尿が現行法上の強制処分として認められる以上、それが尿を獲得するための最終的手段でなくとも、裁判官はそのための令状を発付することができる。⇒× S55.10.25 最終手段として許されるとした。
エ.被疑者から尿を採取するに当たり、被疑者が錯乱状態に陥っていて任意の尿の提出が期待できない状況にあるときは、任意提出の機会を提供せずに、令状によって強制採尿を行うことができる。⇒〇 強制でOK。
オ.裁判官は、強制採尿のための令状を発付するに当たり、医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件を付さなければならない。⇒〇 その通り
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ ⇒ 5のエオ
・R5
〔第15問〕
次のアからオまでの各記述のうち、正しいものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。
ア.強盗殺人事件の捜査に関し、公道上を歩いている被疑者の容ぼう等を撮影することは、防犯ビデオに写っていた犯人の容ぼう等と被疑者の容ぼう等との同一性の有無という犯人を特定するための重要な判断に必要な証拠資料を入手するためであっても、被疑者の同意がある場合か、裁判官の令状がある場合以外には許容されない。⇒× 公道上であれば同意や令状なくともOK。
イ.強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するものであって、この程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合がある。⇒〇 そうしなければ犯罪を見過ごすことになる。
ウ.車両に使用者らの承諾なく秘かにGPS端末を取り付け、情報機器でその位置情報を検索し、画面表示を読み取って当該車両の所在と移動状況を把握する捜査手法は、個人のプライバシーの侵害を可能とする機器をその所持品に秘かに装着することによって、合理的に推認される個人の意思に反してその私的領域に侵入するものであり、刑事訴訟法上、特別の根拠規定がなければ許容されない強制処分に当たる。⇒〇 その通り
エ.荷送人や荷受人の承諾を得ることなく、宅配便業者の運送過程下にある荷物について、外部からエックス線を照射して内容物の射影を観察する捜査手法は、その射影によって荷物の内容物の形状や材質をうかがい知ることができるだけでなく、その品目等を相当程度具体的に特定することも可能である場合には、荷送人や荷受人の内容物に対するプライバシー等を大きく侵害するものであるから、検証としての性質を有する強制処分に当たる。⇒〇 その通り
オ.警察官が、覚醒剤の使用ないし所持の容疑がかなり濃厚に認められる者に対する職務質問中に、その者の承諾がないのに、その上衣の内ポケットに手を差し入れて所持品を取り出したうえ検査する行為は、職務質問に附随する所持品検査において許容される限度を超えるとの評価を受けることはない。⇒× 強制処分にあたるとされる。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個 ⇒ 答え4の3個
・R5
〔第19問〕
弁護人の活動に関する次のアからオまでの各記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。
ア.弁護人は、検察官のした接見の日時を指定する処分に不服がある場合、裁判所にその処分の取消し又は変更を請求することができる。⇒〇 準抗告できる。
イ.弁護人は、司法警察職員が捜索差押許可状に基づき被疑者方を捜索する場合、当該捜索差押許可状の執行に立ち会う権利がある。⇒× 捜査機関が行うものには立会権はなし。
ウ.弁護人は、あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情があるときは、起訴前であっても、裁判官に証人の尋問を請求することができる。⇒〇 OK。(226条、227条)
エ.勾留されている被疑者の弁護人は、裁判官に保釈の請求をすることができる。⇒× 被疑者は対象にならない。
オ.国選弁護人は、自己を国選弁護人に選任した裁判所又は裁判官に辞任を申し出ることにより、自らその地位を離れることができる。⇒× やむを得ない理由があり、裁判所の許可が必要。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ オ 4.ウ エ 5.エ オ ⇒ 2のアウ
・R6
〔第18問〕
接見交通権に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。
ア.接見交通権は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者が弁護人と相談し、その助言を受けるなど弁護人から援助を受ける機会を確保する目的で設けられたものであり、憲法の保障に由来するものである。⇒〇 憲34条(判例H11.3.24)
イ.刑事訴訟法第39条第3項の「捜査のため必要があるとき」とは、接見等を認めると取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に限られるところ、捜査機関が弁護人から身体の拘束を受けている被疑者との接見の申出を受けた時に、現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、検証等に立ち会わせている場合、また、間近い時に取調べ等をする確実な予定があって、弁護人の申出に沿った接見を認めたのでは、取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれがある場合などは、原則として取調べの中断等により捜査に顕著な支障が生ずる場合に当たる。⇒〇 その通り
ウ.弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者と被疑者との逮捕直後の初回の接見は、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要であるので、捜査機関は、現に被疑者を取調べ中であって、弁護人の申出に沿った即時の接見を認めると捜査に顕著な支障が生じる場合であっても、直ちに取調べを中断して、接見させなければならない。⇒× 接見指定が可能。(39条3項)
エ.勾留されている被告人が同時に余罪の被疑者として勾留されている場合、検察官は、その余罪である被疑事件の捜査のため必要があるときは、被告事件についての防御権の不当な制限にわたらない限り、被告事件の弁護人と被告人との接見に関し、その日時等を指定することができる。⇒〇 判例S55.4.29
オ.検察官が検察庁の庁舎内に接見設備のある部屋等が存在しないことを理由として接見の申出を拒否したにもかかわらず、弁護人がなお同庁舎内における即時の接見を求め、即時に接見する必要性が認められる場合には、検察官は、例えば立会人のいる部屋での短時間の接見などのように、いわゆる秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の接見であってもよいかどうかという点につき、弁護人の意向を確かめ、弁護人がそのような接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、それができるように特別の配慮をすべき義務がある。⇒〇 判例(H17.4.19)面会接見をさせる義務を検察官は負う。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個 ⇒答えは2の1個
まとめ
さあ、捜査分野がこれで終了。折り返し地点だ。また次回からは公判分野をやっていきます。


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