はじめに
こんばんは、マークです。今日から折り返しで公判分野をやっていきます。頑張るぞ~。
問われること
公判に絡んだテーマで条文と判例がどうなのかという観点で問われます。原則と例外があり、やはり試験問題なので例外についても聞いてきます。
覚えよう
・起訴便宜主義:248条、十分な犯罪の嫌疑があり、訴訟条件も具備⇒なのに起訴猶予。犯人の性格、年齢、境遇、犯罪の軽重、犯罪後の情況(内面的なもの)により訴追を必要としないものは公訴提起しないことができると定め、検察官の裁量で起訴猶予できる。この制度のことをいう。~正義や訴訟経済の観点からこの主義を採用している(⇔起訴法定主義)
◆起訴状~公訴提起は検察官が起訴状を裁判所に提出して行う(256)。記載するのは①被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項、②公訴事実、③罪名など
・①は氏名、年齢、職業、住所・本籍だが、不詳でもOK。
・②訴因の明示が必要(256Ⅲ)、どの程度特定されていることが必要か?
→識別説(実務):他の犯罪事実との識別機能が最も重要。よって他の犯罪事実と識別しうる程度の記載が必要であり、それで足りる。
→防御権説(過去の有力説):被告に防御の範囲を示す機能が最重要。識別だけでなく、防御行使に支障がない程度までが必要。
~よく出るのが覚せい剤の自己使用事犯→被告人以外の関与者がいないので、信用できる被告人の自白がなければ明確な使用日時等が分からない。それについて訴因が不明確だからだめだというのでは尿検査等から明らかに覚せい剤使用が認められるケースでも起訴できなくなってしまう。→実務ではある程度幅をもった日時、場所を記載している。~傷害致死罪や殺人罪でも似たような事象が起こる。ある程度概括的な記載も已むを得ないものと判断される。
・過失犯:被告人にどのような注意義務違反があったのか具体的事実に基づいて記載がないといけない。
◆起訴状一本主義:起訴状には、裁判官に予断を生じさせるおそれのある書類等は添付してはいけない。起訴に際し、裁判所に提出されるのは起訴状のみであること(256Ⅰ、憲法37)。原則引用もダメとされているが、訴因の特的に必要な程度であれば許容される傾向。
・前科の記載:①前科が構成要素の場合(常習犯)、②前科が犯罪事実の内容の場合(恐喝で「俺には前科がある」と畏怖させた場合)はOK。
・違反すると起訴は無効、公訴棄却となる。
◆審判の対象:審判対象は訴因であり、訴因は検察官の主張する犯罪事実のこと。
◆訴因変更:訴因の追加・撤回・変更はできるが、「公訴事実の同一性を害しない」ことが必要(312Ⅰ)。また原則書面で行われるが、被告人が在廷する公判廷では口頭も許される。
・変更の要否:①そもそも何が食い違った場合に訴因変更の要否が問題となるのか、②その食い違いがどの程度までに生じた場合に変更が必要になるのか を検討。→①かつては検察と裁判所の間の法律構成に食い違いが生じたらとなっていたが、今は訴因たる具体的犯罪事実と、裁判所が心証を形成した事実との間で食い違いが生じたら(事実に変化があれば)必要となる。②については判例は以下のように判断していくこととした。
→ア)審判対象を確定するために必要な事項について食い違い…変更が必要
イ)一般的に被告人の防御に重要な事項に食い違い…原則変更が必要
ウ)被告人の防御の具体的状況などの審理経過に照らし、被告人に不意打ちを与えるものではなく、かつ、判決で認定される事実が訴因に記載された事実と比べ被告にとってより不利益とはいえない場合…変更不要
・具体的問題
ア)共謀共同正犯における実行行為者の食い違い~実行行為者を明示したが、裁判所は異なる認定ができるか?→①殺人罪の共同正犯の訴因としては実行行為者が誰かが明示されていなくても訴因の記載としては欠けているとはいえない。→実行行為者が明示されている場合でも異なる認定しても審判対象の確定という見地からは訴因変更は必要とはいえない→②だが、実行行為が誰かは被告人の防御にとって重要な事項。だから検察官が実行者を明示したならば判決でそれと違う認定をするには訴因変更が必要。→しかし③当初より誰が実行行為をしたかは主要な争点であったから被告に不意打ちを与えるものではないとした。
イ)実行行為の態様の食い違い~クラッチペダルを踏み外した と ブレーキをかけるのが遅れたは訴因変更が必要。訴因で「点火スイッチを作動させ」だったのに「何らかの方法で」と認定することは不意打ちであり違法とした。
ウ)縮小認定はOK。
◆訴因変更の可否~公訴事実の同一性を害さないこと
・基本的事実関係同一説:新旧訴因間に基本的事実関係の同一性が認められる場合に「公訴事実の同一性」が認められる。その同一性は①新旧訴因間に狭義の同一性が認められる場合、または②新旧訴因間に単一性が認められる場合に肯定される。
・狭義の同一性:考え方(判例)は2種類。共通性基準か非両立性基準か。
~共通性基準:主要な要素に共通性があることも着目し、新旧の差異が被告人の関与形態の差異にすぎなければ同一と認めるもの。例としては窃盗と遺失物横領で両訴因ともに日時、場所が近接し、財産を領得する犯罪であり、対象の財物も同一なら狭義の同一性が認められる。
~非両立基準:新旧のいずれか一方しか存在または成立しない場合に同一性を認めるもの。例としてはスーツの窃盗と他人から頼まれてスーツを売却しようとした盗品有償処分あっせん罪 は両立しない。
・単一性:実体の罪数論を基準に判断する。
~単純一罪または科刑上一罪の関係にある数個の事実は単一。強盗の訴因に住居侵入を追加~科刑上一罪だから単一性が認められる。
~併合罪、単純数罪は非単一となる。窃盗幇助の訴因に盗品等有償譲受けの訴因を予備的追加→併合罪なので単一性は否定される。
◆訴因変更の許否
・現在の訴因に対し裁判所が有罪の心証を持っているが検察官が訴因変更をしてきたら許可しないといけないのだろうか。→訴因変更は検察官の専権であり、312条からも許可しなければならない。また当事者主義の観点からも同様。
過去問(法務省HPより)
・R6
〔第25問〕
起訴状一本主義に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。
ア.起訴状一本主義に違反した公訴提起の手続は無効であり、裁判所は、判決で公訴を棄却しなければならない。⇒〇 予断を生じさせてはダメ。
イ.前科の事実を手段・方法として恐喝したという事実で公訴を提起する場合には、公訴事実中に被告人の前科を記載することも許される。⇒〇 通常は予断を抱かせるのでダメだが、①前科が構成要素②前科が起訴事実の内容となっている場合はOK。
ウ.刑事訴訟法第256条第6項により、起訴状には裁判官に事件につき予断を生じさせるおそれのある書類その他の物を添付することが禁止されているので、検察官が勾留されている被疑者について公訴を提起する際に、裁判所に起訴状を提出すると同時に、被告人の逮捕状や勾留状をその裁判所の裁判官に差し出すことは許されない。⇒× 刑訴規則167条にこれらを提出しろとなっている。(起訴状一本主義の例外)
エ.公判審理を担当する裁判所は、証拠開示に関する裁定のためであっても、第1回公判期日前には証拠の提示を求めることはできない。⇒× 証拠開示のトラブルを裁定するためであればOK。
オ.略式命令を請求する場合において、その請求と同時に検察官が立証に必要があると思料する書類及び証拠物を裁判所に差し出しても、刑事訴訟法第256条第6項に反しない。⇒〇 略式命令は公判を開くことなく、裁判所が100万円以下の罰金を科す簡易な手続き、規則289条Ⅰで必要があると思料する書類、証拠物を差し出さなくてはならない。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ ⇒答え 4のウエ
・R5
〔第21問〕
訴因変更に関する次のアからオまでの各記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうちどれか。ただし、判例がある場合には、それに照らして考えるものとする。
ア.「Aを脅迫して現金を強取した」という強盗の訴因で起訴された甲について、「Aに暴行を加えて現金を交付させた」という恐喝の事実を認定するには、訴因変更の手続を要しない。⇒× これは注意を要する例外のパターン。暴行が起訴状に書かれていないので事実として内包されていない。訴因変更が必要!
イ.「乙と共謀の上、Vに対し、殺意をもって、甲が、Vの頸部を絞め付け、窒息死させて殺害した」という殺人の共同正犯の訴因で起訴された甲について、「乙と共謀の上、Vに対し、殺意をもって、甲又は乙あるいはその両名において、Vの頸部を絞め付け、窒息死させて殺害した」という事実を認定するには、公判で、殺害行為を行ったのが甲と乙のいずれなのかが争点となっていたとしても、訴因変更の手続を要する。⇒× 確かに実行行為をだれが行ったかは重要ではあるが、「共犯関係にあることが確実でかつ、甲と乙のどちらかがやったにせよ、甲に殺人罪の責任を負わせることが法律上間違いないのであればそのままで良い。
ウ.「ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏んだ過失により、自車を前方のA運転の自動車に追突させ、Aに傷害を負わせた」という過失運転致傷の訴因で起訴された甲について、「A車の後ろに進行接近する際、ブレーキをかけるのが遅れた過失」を認定するには、訴因変更の手続を要する。⇒〇 内容が違うので被告に防御の機会を与えるために必要。
エ.日時、場所、方法を特定した覚醒剤使用の訴因を、別の日時、場所、方法の覚醒剤使用の訴因に変更することは、いずれの訴因も被告人の尿中から検出された同一の覚醒剤の使用行為に関するものである場合には、公訴事実の同一性に欠けることはなく、許される。⇒〇 変更してもOK。尿から出たものという共通点があれば訴因変更で対応して良い。実務では幅を持たせているようだ。〇月〇日~▲月▲日の間に…と。
オ.「A方に侵入し、現金10万円を窃取した」という住居侵入・窃盗の訴因を、別の日時に「B方に侵入し、現金15万円を窃取した」という住居侵入・窃盗の訴因に変更することは、両訴因の事実が、実体法上は常習特殊窃盗罪を構成する場合であっても、公訴事実の同一性を欠くため、許されない。⇒〇 追起訴が必要。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ ⇒答え 1のアイ
まとめ
公判分野の入口になります。例外を問題で出してくるところはやらしい感じがしますね。覚えていきましょう。

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