はじめに
こんばんはマークです。本日は共謀共同正犯についてやっていきます。ただし、4月に入り、試験まで時間もなくなってきましたので実践的に過去問をメインに内容検証していきたいと思います。
過去問(令和5年 司法試験予備試験短答式、法務省HPより引用)
◆問題
〔第2問〕(配点:3)
次の【判旨】に関する後記1から5までの各【記述】のうち、誤っているものを2個選びなさい。
【判 旨】
共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が、特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体
となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よ
って犯罪を実行した事実が認められなければならない。したがって、このような関係において共
謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自
己の手段として犯罪を行ったという意味において、その間刑責の成立に差異を生ずると解すべき
理由はない。さればこの関係において実行行為に直接関与したかどうか、その分担又は役割のい
かんは、共犯の刑責自体の成立を左右するものではないと解する。
【記 述】
1.【判旨】を前提にすると、殺意を有する者と傷害の故意にとどまる者との間で共謀共同正犯
が成立する余地はない。
2.【判旨】は、共同正犯の成立には、実行行為の一部を分担することは必要ないとの立場に立
っている。
3.【判旨】は、共謀共同正犯の成立には、単に関与者の内心における意思の合致があるだけで
は十分でなく、客観的な謀議行為が必要であるとする考えと矛盾しない。
4.【判旨】に対しては、共同正犯を教唆及び幇助と区別することが困難になるとの批判がある。
5.【判旨】を前提にすると、共謀共同正犯の成立には、実行行為を行わない者が実行行為者に
対して指揮命令をすることが必要である。
判例と説
この問題は練馬事件(S33.5.28)をもとに判例の内容を理解できているかを問うている。
・事件の内容:会社の組合同士(強硬派と穏健派)の争いで暴行事件が起き、強硬派の組合員が検挙された。それに関与した警察巡査に対し強硬派の組合員は反感をもった。その後多数の強硬派組合員が共謀して当該警察巡査を誘い出し、暴行して殺してしまったという事件。
・判旨は以下の通り(時間の余裕があれば読む。なければ太字みて次へ)
- いわゆる共謀共同正犯が成立するには、二人以上の者が特定の犯罪を行うため、共同意思の下に一体となつて互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移すことを内容とする謀議をなし、よつて犯罪を実行した事実が存しなければならない。
- いわゆる共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも、他人の行為をいわば自己の手段として犯罪を行つたという意味において、共同正犯の刑責を負うもので、かく解することは憲法31条に違反しない。
- 「共謀」または「謀議」は、共謀共同正犯における「罪となるべき事実」にほかならず、これを認めるためには厳格な証明によらなければならない。
- 共謀の判示は、謀議の行われた日時、場所またはその内容の詳細、すなわち実行の方法、各人の行為の分担役割等についてまで、いちいち具体的に判示することを要しない。
- 憲法38条2項は、強制、拷問若しくは脅迫による自白または不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白の証拠能力を否定したものである。
- 憲法第38条3項の規定は、被告人本人の自白の証拠能力を否定または制限したものではなく、かかる自白の証明力(証拠価値)に対する自由心証を制限し、被告人本人を処罰するには、さらにその自由の証明力を補充しまたは強化すべき他の証拠(いわゆる補強証拠)を要することを規定したものである。
- 共同審理を受けていない単なる共犯者は勿論、共同審理を受けている共犯者(共同被告人)であつても、被告人本人との関係においては、被告人以外の者であつて、かかる共犯者または共同被告人の犯罪事実に関する供述は、憲法第38条2項とごとき証拠能力を有しないものでない限り、独立、完全な証明力を有し、憲法第38条3項にいわゆる「本人の自白」と同一視し、またはこれに準ずるものではない。
- 同一の犯罪について、数人の間の順次共謀が行われた場合は、これらの者のすべての間に当該犯行の共謀が行われたものと解するを相当とし、数人の間に共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所に会し、その数人の間に一個の共謀の成立することを必要とするものではない。
・この判例は共謀共同正犯の成立を考える説のうち「肯定説」の立場を取ったもの。
謀議があって、基づく実行がある。共謀に参加したのであれば直接実行に関与しない者でも、他人の行為をいわば自分の手段として犯罪を行ったという意味において、その間刑責の成立に差異を生ずると解すべき理由はない。そうであるならば、実行行為に参加したかどうかとか、その分担又は役割のいかんは共犯の刑責自体の成立を左右するものではない。とした。
肯定説は、共犯を肯定しないと刑事政策的不都合が生じる(ボスを逮捕できない)ことや、分け前が対等なのに、実行行為をくじで決めた時に実行をしていない者を罰せないという不都合をなくそうとしたもの。
・これをスタートとしているのだが、厳格にやると共謀共同正犯と教唆犯、幇助犯との差がなくなってしまうこともあり、実務レベルでは得た利益の分担や役割の内容を考慮して判断していくよという形に変化してきている。
回答検討
【記 述】
1.【判旨】を前提にすると、殺意を有する者と傷害の故意にとどまる者との間で共謀共同正犯
が成立する余地はない。
⇒「×」基本的な部分のズレがあると基本は共謀共同正犯は成立しないが、構成要件的評価として重なり合いがあれば錯誤論から、その重なり合いの限度で共謀共同正犯が成立しうると解する。
2.【判旨】は、共同正犯の成立には、実行行為の一部を分担することは必要ないとの立場に立
っている。
⇒「〇」判旨の通り
3.【判旨】は、共謀共同正犯の成立には、単に関与者の内心における意思の合致があるだけで
は十分でなく、客観的な謀議行為が必要であるとする考えと矛盾しない。
⇒「〇」 判旨は謀議が必要としている。よって単なる内心における意思の合致だけではダメという考えと矛盾はしない。
4.【判旨】に対しては、共同正犯を教唆及び幇助と区別することが困難になるとの批判がある。
⇒「〇」 判旨通りカチカチな肯定説だと教唆犯とか幇助犯との区別がつかなくなる。
5.【判旨】を前提にすると、共謀共同正犯の成立には、実行行為を行わない者が実行行為者に
対して指揮命令をすることが必要である。
⇒「×」 別に実行行為を行わない者が指揮命令をしないのであれば共謀共同正犯が成立しないとは言っていない。
注意
この判例の50年後にスワット事件(H15.5.11)があり、時代とともに共謀の要件が緩和(拡大)されているので注意。犯罪の意思連絡(共謀)と客観的証拠の認定が変化している。練馬事件は「明示的」な合意を必要とし、スワット事件は「黙示的」な意思の通じあいや客観的な役割分担で共謀共同正犯を認めたのである。
最後に
本日は実際の過去問を解くための必要な知識を検討してみた。覚えておこう。


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