民法 論文16(過去問H23、通謀虚偽表示、無権代理と相続)

論文 民法

はじめに

こんばんは、マークです。民法の論文について今日はやっていきたいと思います。いきなりナンバーは16になっているのですが、これは基本論点が15個あって、それをやろうと思っているのだが、時間がなくて、いきなり過去問についてやるので16からはじめるという異例な状況です。すみません。時間がないので進めます。

本日の問題(法務省HPより)

Aは,平成20年3月5日,自己の所有する甲土地について税金の滞納による差押えを免れるため,息子Bの承諾を得て,AからBへの甲土地の売買契約を仮装し,売買を原因とするB名義の所有権移転登記をした 次いで Bは Aに無断で 甲土地の上に乙建物を建築し 同年11月7日乙建物についてB名義の保存登記をし,同日から乙建物に居住するようになった。
Bは,自己の経営する会社の業績が悪化したため,その資金を調達するために,平成21年5月23日,乙建物を700万円でCに売却し,C名義の所有権移転登記をするとともに,同日,Cとの間で,甲土地について建物の所有を目的とする賃貸借契約(賃料月額12万円)を締結し,乙建物をCに引き渡した。この賃貸借契約の締結に際して,Cは,甲土地についてのAB間の売買が仮装によるものであることを知っていた。
その後,さらに資金を必要としたBは,同年10月9日,甲土地をDに代金1000万円で売却し,D名義の所有権移転登記をした。この売買契約の締結に際して,Dは,甲土地についてのAB間の売買が仮装によるものであることを知らず,それを知らないことについて過失もなかった。同年12月16日,Aが急死し,その唯一の相続人であるBがAの一切の権利義務を相続した。
この場合において,Dは,Cに対し,甲土地の所有権に基づいて,甲土地の明渡しを求めることが
できるかを論ぜよ。


論点

・通謀虚偽表示と第三者 94条1項、2項

・他人物売買 561条

・他人物賃貸借(559条、561条)

・無権理者と相続(無権代理と相続の類推適用)116条、882条

・116条の類推適用について・信義則・但し書きの解釈

・対抗要件の先後について

ベースとなる判例

・最判昭和42年10月31日

・94条2項の第三者に関する判例ではあるが、問題とは少し観点が違うので注意。

・Aが真の不動産所有者。Dから借金をしたが、返済できていない。このままだと土地を差し押さえられる。知人のBに協力をしてもらい、売却した形にして名義を変えた(通謀虚偽表示)。Bは自分に名義が移ったことを奇貨として、Cを騙して当該不動産を売却した。でもまだ登記はされてなかった。DはABの取引は何かおかしいぞ、裁判所におかしいのでその不動産については「今もめているので、勝手に売ったりしてはダメだよと」という仮処分判決をもらい、それが登記がされた。Cがいざ登記をする段階になって仮登記がされているのでそれはおかしい、私は94条2項で保護されると主張。Dは不動産は登記の先後で決まるとして主張。最終、最高裁は登記ファーストなのでDの主張を認め、Cは認められなかった。

注意点

なぜ、無権利者の行為の追認について116条を類推適用なのかが最初わからなかった。本件では無権知者が自分の物として甲土地を売却している。116条はあくまで無権代理人の行為を追認することの規定である。あくまで単なる無権理者(自分の持ち物です)で売却していることと、Aの代理人ですと偽って売却しているのかが明確に違うから直接適用はできない。でも、両方とも構造が本質的に一緒だから類推適用してもよいよね、となるのである。細かく表現すると、3つの類推すべき法的な理由(論理的根拠)がある。1.管理処分権の欠如が一緒、2.外見や実態の区別がつかない、3.事後的な承諾で救う必要性がある という点である。

・また116条を類推適用するまでもなく、すでにAの所有権はなくなっていたのだと考える方もいると思うので、その場合は、答案構成が変わってくると思います。

条文

民法94条1項、2項、 561条、559条、561条、601条、896条、116条、116条但し書き、

借地借家法10条1項


答案構成

1段階(Dの所有): ABは通謀虚偽表示で無効。しかし、B名義の登記という外観に基づき、Dは善意無過失の第三者(94条2項)として保護され、Dは所有権取得を主張できる。 

第2段階(Cの権原の有無): CはBと土地賃貸借を締結(建物所有目的)し、かつ登記された乙建物の引渡しを受けているため、当該賃借権は借地借家法10条1項による対抗要件を具備しうる地位にある。 もっとも、CはABの通謀を知る悪意であるため94条2項の保護は受けられない。したがって、BC間賃貸借は「当事者間では有効」だが、原始的には真の所有者(A)・その承継人(D)には対抗できない(=対抗不能)という位置付けとする。 

第3段階(BがAを相続した効果): 他人物賃貸借について、賃貸人(B)が後に所有権者の地位を取得した場合、民法116条の趣旨(追認の遡及効)を類推適用し、当該賃貸借は「遡って」有効に帰する。さらに、賃貸人が本人を相続した事案では、追認拒絶は信義則上許されないと解するのが判例・通説的理解(無権代理準用の系譜)であり、追認の効果は遡及。 

第4段階(116条但書と優劣): 116条但書の第三者保護は、物権的優劣の決定については、結局、対抗要件の先後で解決すべきとするのが一般的理解。よって、賃借権が遡って有効に帰した時点(本件ならBC賃貸借時)に、借地借家法10条1項の対抗要件(登記された建物の引渡し)が具備されていれば、その時点に遡って第三者に対抗可能となる。 本件では、Cは平成21年5月23日に登記された乙建物の引渡しを受けている。他方、Dの登記は同年10月9日。ゆえにCが先に対抗要件を備えたものとして、Dに対抗し得る。 

第5段階(結論): Dの明渡請求は認められない。

自己の答案(あくまで参考です)

第1 DはCに所有権による甲土地の明渡し請求をする事が出来るか。 
1.要件事実 
Dが所有権に基づき甲土地の明渡しを請求するには①Dの甲土地所有、②Cの甲土地占有という要件事実が必要となる。それぞれについて検証する。 
2.①について 
(1)Dは甲土地をBより購入している。 
(2)しかしBは仮想売買により表面上所有者となったようにみえるだけであり、実質は無権利者である。つまりBD間の売買は他人物売買である。売買自体は有効であるが、Bは所有者Aから正式に所有権を取得しなければ、Dは正式に所有権を取得することはできない。(561条。なお、Bに対する契約の解除権や損害賠償請求権等は発生する。) 
(3)AB間の売買は仮想譲渡である。理由は税金滞納による土地差押えを逃れるための通謀虚偽であるからである。よって、Aは善意の第三者に対して意思表示の無効を対抗することができない(94条2項)。善意の第三者とは当事者およびその包括承継人以外の者で、通謀虚偽により作出された権利関係を信じ、新たな法律関係を構築した者と解する。Dは甲土地購入に際して、AB間の通謀虚偽表示に関しては善意であり、調べれば分かった等の注意散漫であった等の事情もなく、無過失でもある、よってAはDに対してBとの売買無効を対抗できない。その結果、Dが所有権を取得することになる。 
(4)以上よりDは甲土地の所有権を取得したといえる。(①充足) 
3.②について 
(1)Cの抗弁1(借地借家法10条、559条、561条、601条) 
(ア)H21.5.23にCはBと甲土地の賃貸借契約を締結している。また甲土地上に登記された乙建物を所有していることから借地借家法10条により、甲土地を占有する権利があるのだと主張することが考えられる。 
(イ)Dの反論 
しかしAB間の甲土地売買が通謀虚偽であったことから、本件賃貸借契約は他人物の賃貸借契約を締結していることになる。つまりBが無権理者であり、法律上の正当な賃貸契約を締結したとは評価できない。また、Cは通謀虚偽表示に関して認識していたことから悪意であったといえるので、94条2項の第三者にもあたらない。 
(ウ)よってBC間の甲土地賃貸借契約はBC間では有効であるが、甲土地の真の所有者であるAや、その特定承継者であるDに対しては対抗することができない(対抗不能)。 
(2)Cの抗弁2(116条) 
(ア)Aの死亡(H21.12.16)によりBが所有者Aの地位を相続したので、それにより116条が適用され、他人物賃貸借が有効になると主張することが考えられる。 
(イ)116条は適用できるか 
116条は無権代理人の行為に対する本人の追認に関する規定である。本件条文の趣旨は事後的に法律行為を補完することである。よって、他人物賃貸においてもその趣旨は妥当し、類推適用することが可能であると解する。 
(ウ)116条が類推適用できたとしてもBはAの資格に基づき、追認を拒絶することができるのではないか。本件では通謀虚偽表示の当事者のうち一人が死亡した。この場合の無権代理行為の追認についてどのように検討するかが問題となる。 
(ⅰ)相続人が無権理者のみであった場合に被相続人と相続人の地位が融合することから無権代理人と法律行為を行った善意の第三者は当然に権利を取得するという考え方もある。 
(ⅱ)一方で被相続人の権利もあったのであるから死亡したとしても権利は併存するのだと考える説もある。 
(ⅲ)当然に融合すると考えると被相続人の偶然の死ということによって、善意の第三者が利益を得てしまうことから、権利は併存するが、それぞれの状況を考慮し、信義則等に反する場合は拒絶等の主張を許さないといった形で検討していくものと解する。融合してしまうとすると相手方の解除権もなくしてしまうことから、併存することと解する方が理にかなっている。 
(ⅳ)本件についてみると、Bが無権代理行為を行いDに甲土地を売却している。そしてその後、真の所有者であるAが死亡し、Aの唯一の相続人としてBが権利を相続している。この時点でAが追認を拒絶する権利自体は相続により取得したものと解する。しかしながら、もし追認を拒絶するとなると、自分自身が行った無権理者としての行為を取消せることになり、信義則(1条2項、禁反言)に反するものであると言わざるを得ない。 
(ⅴ)よって、Bは追認を拒絶することはできない。 
(エ)以上より、Cは有効に賃貸借契約を締結したことになることからCの占有権が認められることになる。(②充足。Dは甲土地の明け渡しを請求できない。) 
第2 Dの再反論 
(1)内容 
Cの請求により116条が類推適用されたとしても116条のただし書きで第三者であるDの権利に対して対抗できないと主張することが考えられる。 
(2)116条の適用に関して 
相続による地位の承継について116条が類推適用される。116条の類推適用により、BC間の甲土地の賃貸借契約が遡及的に有効となる。 
(3)物権変動における権利の優劣について 
物権変動における対抗要件は具備した日付に基づき判断をすべきものと解する。本件においてはCが乙建物を取得し、登記をしたのがH21.5.23であり、Dが甲土地を取得し、登記したのがH21.10.9となっている。つまり、Cの方が早い時期に対抗要件を具備しているのでDはCに劣後する。 
(4)その他 
Dが甲土地を購入する際には乙建物が建っていて、Cが占有している状態であったことを当然ながらDは認識できたであろうことから、当該土地を購入すれば占有者がいる状態を想定できたのであるから、そのようなDを厚く保護する必要はない。 
(5)結論 
以上よりDはCに対して所有権に基づく土地明け渡し請求をすることができない。 
以上 

まとめ

ざっと過去問について自分なりのポイントをまとめてみました。参考になればと良いかと。

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