はじめに
こんばんは!今回は前回に続き、平成26年予備試験・民法(設問2)をやっていきましょう。
問題
設問1で「修補請求(追完請求)が認められる」という結論を出した後、物語は急展開します。Aがしびれを切らして別荘(A邸)を第三者Fに売却してしまったのです。しかも、現在の仕様違いは売却価格に一切影響していないという特殊な事情があります。 この状況で、Aは請負人Cに対して「改修工事費用相当額」を損害賠償請求できるでしょうか?
改正民法(559条、564条、415条2項1号)の枠組みで、受験生が最も差がつく「現場思考論点」を徹底解剖します!
設問2の特殊な事実関係と問題意識
- 事実の整理:
- AはCに修補(追完)を求めたが、Cは3か月間放置した。
- AはA邸をFに2,500万円で売却・引渡しを完了した。
- 仕様違いのタイルは、外壁としての性能に問題はなく、A邸の売却価格には全く影響を及ぼさなかった。
- Aの請求:
- Aは、追完に代わる損害賠償として「外壁の改修工事にかかる費用相当額」を請求(559条、564条、415条2項1号)。
ここで試験委員が受験生にぶつけている問いは、「①売却価格に影響していないのに、そもそもAに『損害』はあるのか?」、そして「②目的物を売却した後の元オーナーに、請負人の担保責任を追及する資格があるのか?」という2点です。
論文で対立利益を意識した論理展開(答案の骨組み)
問題文から「反対の考え方にも留意しながら論じなさい」と指定されているため、以下のステップでC側の反論(反対説)を潰していく必要があります。
論点①:「価格に影響がない=損害ゼロ」とする反論の不当性
- C側の反論:
「A邸は仕様違いのままでも2,500万円という適正価格で売れた。Aの財産状態に減少(損害)は生じていない」 - これに対する再反論(答案に書くロジック):
- 損害とは、債務が本旨に従って履行された場合の財産状態と、現在の財産状態との差額(差額説)である。
- 本件では、Aが追完を催告したにもかかわらずCが応じなかった時点で、Aには「修補費用相当額」の追完に代わる損害賠償請求権(415条2項1号)が具体的に発生している。
- たまたま市場の好況やFの主観(外観を気にしないなど)によって高く売れたからといって、Cの債務不履行によって発生した「修補費用分の財産的マイナス」が遡って消滅するわけではない。したがって、費用相当額の損害は認められる。
論点②:「転売した=賠償請求権が消滅または移転する」とする反論の不当性
- C側の反論:
「Aは既にA邸をFに売却しており、もはや自分で改修する必要がない。したがって、損害賠償請求権を失うか、あるいはFに移転すべきだ」 - これに対する再反論(答案に書くロジック):
- 契約不適合責任(請負人の担保責任)を追及する権利は、請負契約の当事者である「注文者A」の地位に帰属するものです。目的物の所有権が第三者Fに移転したからといって、契約上の地位まで当然にFに移転するわけではありません。
- また、AがFに対して「不適合のない完全な状態」で引き渡せなかった以上、AとFとの売買契約関係(あるいはFからの将来的なクレームリスク)において、Aが不利益を被る地位にあることに変わりはありません。
- したがって、Aが目的物を売却した後であっても、発生した損害賠償請求権を行使することは妨げられません。
改正民法(現行法)に基づくスマートな条文操作
旧民法下では「瑕疵修補に代わる損害賠償(旧634条2項前段)」として議論されていましたが、改正民法では極めてクリアに条文を選択できます。
- 559条・564条に基づき、請負の不適合について売買の損害賠償の規定(415条)を準用する。
- Aは相当の期間を定めて追完の催告をしたのにCが着手しなかったため、415条2項1号(履行の追完に代わる損害賠償)に変形していることを明示する。
- これにより、「修補費用そのもの」が履行利益の損害として直ちに金銭債権化するため、転売後のAが請求することの正当性がより論理的に説明しやすくなります。
4. ワンポイントアドバイス
この設問2は、典型論点のパズルではなく、「損害の本質とは何か」をその場で深く考えさせる神問です。
答案作成のコツは、単に「Aの勝ち」とするだけでなく、「C側の『売却価格に影響していない』という事実にどう法的な評価(評価論)を下すか」を丁寧に書くことです。ここをサボらずに、「それは偶発的な事情にすぎない」と一言添えられるだけで、採点官への印象はガラリと変わります。
まとめ
改正民法の条文を武器に、ぜひこの現場思考のプロセスを自分のものにしていきましょう!


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