もうひといきだ 刑法 短答24(放火・失火の罪)

短答式 刑法

はじめに

こんばんは、マークです。前回は財産に対する罪を大ボリュームで行いましたが、刑法各論もあと一息といったところです。本日は放火についてやっていきます。

・保護法益:不特定または多数人の生命・身体・財産。

・公共危険罪:保護法益の対象が実際に侵害されることは必要ではない。侵害の危険が発生すれば足りる。⇒つまり危険犯。危険は公共の危険を意味する。

・抽象的危険犯と具体的危険犯の関係~現住建造物等放火罪は危険の発生は求められていないので抽象的危険犯。一方自己所有の非現住・非現在建造物等放火罪は公共の危険の発生が必要であり、具体的危険犯。

現住建造物等放火罪(108条)

・客体:現に人が住居に使用し又は現に人がいある建造物・・・。

・現住と現在~「現住」は人が起臥寝食に使う場所として日常使用される建物。放火の時点で人がいなくても現住建造物にあたる。放火犯は人には含まれない。「現在」は客体が現住建造物でなくても人がいれば現在建造物となる。

・複合的建造物の処理(物置に放火したらどうなるか等~①物理的一体性からの延焼可能性②機能的一体性 で総合的に感がる。③難燃性も考慮するが状況次第

・行為:放火~点火は媒介物でもOK。

・既遂時期(独立燃焼説)~判例。火が媒介物から離れて目的物に移り、目的物が独立に燃焼を継続する状態に達すれば既遂。~その他効用喪失説、毀棄説等あり。

・未遂・予備は罰する

・罪数~複数の放火でも生じた公共の危険が1個と判断されるならば包括して本罪一罪。

・109条物件、110条物件が媒介となり現住建造物が燃えた⇒包括して本罪一罪。

・同じ例で現住建造物が燃えなかったら、未遂の一罪が成立する。

非現住・非現在建造物等放火罪(109条)

・客体:現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物等

・他人所有か自己所有か~他人所有(1項)の場合公共の危険の発生が必要ではない。抽象的危険犯。一方自己所有(2項)に関しては公共の危険の発生が必要。具体的危険犯。~自己所有でも差押えを受けたもの、賃貸、付保したものは1項で処罰される。

・1項は焼損したら既遂。一方で2項は「焼損+公共の危険の発生」がないと既遂にならない。~不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険発生が必要。一般人の蓋然性判断が基準。

・公共の危険(定義):不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険のこと。

・2項の公共の危険を行為者が認識を有していたことが必要かどうかが論点。⇒自分の物を燃やしたって本来違法じゃないよね。でもそれが犯罪になるのであれば公共の危険を発生させたからでしょ。じゃあ、その認識は必要だよね。⇒これに対し批判あり。公共の危険の認識を有するということは108条(現住建造物等)や109条1項(他人所有の非現住建造物)への延焼の認識を意味し、109条2項の案件は成り立たないのではとなる。⇒反論としては公共の危険は一般人から見て、危険を感じさせる状態なので、延焼させるという危険とは違う。だから公共の危険は認識しながらも延焼は認識していないこともある。

・未遂は罰する。予備は他人所有の場合のみ罰する。

建造物等以外放火罪(110条)

・客体:現住建造物等、非現住建造物等 以外⇒バイクがよく出てくる。(法曹界は何台バイク燃やしとんねん)自己所有でも付保されたものとかの場合は他人所有として処理される(1項で処理)

・公共の危険:これが要件となる。具体的危険犯。定義:不特定または多数人の生命・身体・財産に対する危険のこと。

・公共の危険の認識の要否~①不要説(判例):本罪を器物損壊の結果的加重犯ととらえる。なので認識は不要と。でも加重類型と見出すは難しいかも。②必要説(通説):1項では、器物損壊より罪が重いのは公共の危険の発生が理由なのでその認識が必要と考える。2項は本来自己所有なので違法じゃないのにって考えると公共の危険の認識が必要だよねとなる。ちなみに批判、反論は非現住建造物放火罪のところと一緒。

延焼罪(111条)

・自己の非現住建物に放火⇒108条の現住建造物、109条Ⅰ非現住建造物に延焼すると罰する。

・自己の建造物等以外のもの(バイク)に放火⇒他人所有のバイクに延焼した場合も罰する。

失火罪(116条)

・失火~過失により出火させること

・1項~108条の現住建造物、109条の非現住建造物を焼損の時は抽象的危険犯。

・2項~109条2項(自己の非現住建造物)、110条(その他の物)を焼損の時は具体的危険犯。公共の危険を発生させたことについての過失が必要。

業務上失火罪・重失火罪(117条の2)

・失火罪の加重類型。

・業務上の業務は職務として火気の安全に配慮すべき社会生活上の地位のこと。

・重大な過失とは注意義務違反の程度が著しいこと。


過去問(法務省HPより)

・R5年の問題

〔第6問〕
放火の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものを2個選びなさい。
1.人が居住する木造建物Aと人が居住していない木造建物Bは、木造の渡り廊下で接合され、渡り廊下を通じて人の行き来のある構造となっていた。甲は、これらの事実を認識した上で、その当時誰もいなかった建物Bに放火して建物Bを焼損した。この場合、建物Aに延焼しなければ、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。⇒× 物理的、機能的一体性のあるものに放火し燃え始めたら既遂になるよね。
2.甲は、Vがその家族と共に居住する木造家屋に放火してこれを焼損した。この場合、Vとその家族が1泊2日の旅行中で不在であり、甲がそのことを認識して放火したのであれば、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。⇒× 一時的な旅行では現住性は変化しない。
3.甲は、妻と二人で居住する木造家屋を燃やそうと考え、壁に掛けられたカレンダーに火をつけた。この場合、上記カレンダーが焼損した時点で、これに気付いた妻に火を消し止められ、他に燃え移らなかったのであれば、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。⇒〇 判例は独立燃焼説なので本件は火が媒介物を離れ独立して燃焼しているとはいえない。
4.甲は、火災保険金を詐取する目的で、自己が単独で居住し、かつ、誰も現在しない木造家屋に放火してこれを焼損した。この場合、刑法第108条の「現に人が住居に使用し又は現に人がいる」の「人」に犯人は含まれないから、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。⇒〇 他人所有の非現住建造物として扱われる(109条1項での処理)
5.甲は、Vが居住する木造家屋の押し入れの床にガソリンをまいて火をつけたところ、同押し入れの床板が独立して燃焼するに至ったが、他に燃え移る前に消し止められた。この場合、上記家屋の効用を失うに至っていなければ、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。⇒× 独立燃焼したので既遂。

⇒結果3、4

・令和7年の問題

〔第6問〕
放火及び失火の罪に関するアからオまでの各記述を検討した場合、正しいものの組合せは1から5までのうちどれか。
ア.甲は、自己所有の家屋に一人で居住していたが、同家屋に掛けた火災保険の保険金をだまし取ろうと考え、同家屋に放火して全焼させ、公共の危険を生じさせた。この場合、甲に他人所有非現住建造物等放火罪が成立する。⇒〇 付保物件は109条1項で処理。
イ.甲は、自己所有の無人倉庫に放火しようと考え、同倉庫に置かれた新聞紙に火をつけたが、
同新聞紙が燃えたにとどまり、同倉庫は焼損しなかった。この場合、甲に自己所有非現住建造
物等放火罪の未遂罪が成立する。⇒× 112条、自己所有の非現住建物に対しては未遂はない。公共的危険も発生していない。
ウ.甲は、A所有の自動車に放火しようと考え、同放火に使用するガソリンとライターを持って同車に近づいたが、甲に不審を抱いた警察官から職務質問を受けたため、同車に放火するに至らなかった。この場合、甲に放火予備罪が成立する。⇒113条、予備罪の対象は108条の現住建造物と109条1項の他人所有の非現住建造物に対するものだけ。
エ.甲は、自己所有の無人倉庫を失火により焼損し、それによって公共の危険を生じさせた。この場合、甲に失火罪が成立する。⇒〇 失火罪、116条2項。
オ.甲は、Aが居住するA所有の家屋に放火しようと考え、同家屋近くの消火栓から放水できな
いように同消火栓を損壊したが、放火するに至らなかった。この場合、甲に消火妨害罪が成立
する。⇒× 114条、火災の際にが必要。
1.ア イ   2.ア エ   3.イ ウ   4.ウ オ   5.エ オ  ⇒2


まとめ

今日は放火・失火について検討してみました。細かい部分もありますが、基礎となる考え方になるので覚えていきましょう。それでは。


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